運転士は手間と時間をかけて育ててきた
JRでは、運転士などの「鉄道職」の採用は長い間「新卒者」と決まっていた。他の鉄道会社からの中途採用も、JRでは見かけないという。10年ほど前から社会人採用を実施してきたJR東日本でも、中途採用者は技術畑の「テクニカルエンジニア」や、みどりの窓口や改札、ホームの監視などにあたる人材に限ってきた。
あるJRの社員は「理由はわからないですが、少なくとも運転士については、ずうっとそうだったので」といい、違和感なく定着していたようだ。半面、05年4月に起きた尼崎脱線事故では、運転士に課せられていた再教育プログラムの「日勤教育」が問題にもなって、運転士の仕事の厳しい現実が伝えられてもいた。運転士には資格(免許)が必要なこともあって、いずれにしても、JRが手間と時間をかけて育てているわけだ。
JR西日本は「中途採用といっても第2新卒者なので、人材育成のところは変わりありません」という。
同社は尼崎事故以来、再発防止を掲げて人員を増やしていて、06年度以降の採用では毎年1000人規模を、新卒者雇用でまかなってきた。少子化によって新卒採用だけでは遣り繰りがつかなくなってきたうえに、人材の流動化などで人員の維持も厳しくなってきた。安全運行のためにも、優秀な人材の確保を優先する。