郵政民営化の見直しをめぐる駆け引きが、与野党間で早くも過熱しそうだ。日本郵政公社が現在の日本郵政グループとして民営化したのは2007年10月だが、郵政民営化法は政府の郵政民営化委員会が発足した06年4月から起算し、3年ごとに「民営化の進ちょく状況や経営形態について総合的に見直す」と定めている。これを受け、同委員会は2008年8月21日、09年3月までに見直し案をまとめるための議論をスタートさせた。これを好機ととらえる与野党は、次期衆院選のマニフェストに民営化見直しの具体策を盛り込む方針だ。民営化からわずか1年余りで、組織再編や2010年度の上場目標など、民営化の基本政策が見直される可能性が出てきた。
自民、民主どちらが政権をとるかで大きく方針転換
郵政民営化委員会は、小泉純一郎元首相のブレーンだった田中直毅氏を委員長に、有識者5人で組織するが、言うまでもなく、同委員会は小泉・竹中路線の郵政民営化を推進する立場にある。このため来春の「3年に一度の見直し」とは、「現行の民営化法の枠内で、進捗状況を点検する程度」(同委員会関係者)と認識している。実際に21日の同委員会で示された見直しのポイントは、07年10月の日本郵政グループの発足で、(1)経営の自主性が高まり、国民の利便性が向上したか (2)郵貯など資金の運用が活性化したか (3)郵便局が地域社会の健全な発展に寄与しているか――など、抽象的かつ限定的な内容になった。
同委員会はこれらを論点に、全国の自治体、経済団体、産業界、有識者の代表ら約100人から年内いっぱい意見聴取などをした後、年末から具体的な議論に入るとしている。このスケジュールは、年内を関係者からのヒアリングに充て、同委員会としては具体的な議論には踏み込まないことを意味している。
これには理由がある。次期解散・総選挙の足音が近づきつつあるからだ。年内もしくは年明けが有力とみられる解散・総選挙が行われた場合、自民、民主の両党がマニフェストに何を掲げ、どちらが政権をとるかで郵政民営化は大きく方針転換を迫られる可能性がある。その前に、小泉政権からの意向をくむ現在の郵政民営化委員会が見直し論議をしても、意味をなさないからだ。少なくとも、「次期衆院選の与野党のマニフェストを吟味し、次期政権のスタンスを見極めなくてはならない」(政府関係者)という。