キヤノンは同社グループで働く期間社員の夏期・年末の休業補助として、年間最大4万円を支払うことを決めた。対象は全期間社員8900人。期間社員という雇用形態のあり方が問題となるなかで、今回の措置が他の大手メーカーにも波及する可能性が出てきた。
長期休暇のある月には賃金が数万円単位で減る
期間社員とは一定期間に限定して雇われる労働者。派遣とは異なり企業と直接雇用を結ぶが、そのほとんどが月給制ではないこと、社員のように賞与がないことといった格差があり問題になっている。そのため、長期休暇のある月には賃金が数万円単位で減ってしまうといった不満も上がっている。
この問題について日本共産党が08年2月に行われた国会の質疑のなかで触れたのがきっかけとなり、同党の志位和夫委員長らが6月30日にキヤノン長浜工場で実態調査を行った。すると、「本来は楽しいはずの盆暮れに、生活が苦しくなっている」といった声が労働者から上がり、キヤノン本社の諸江昭彦専務取締役に待遇の改善を訴えた。日本共産党の担当者によると、その場で検討するとの回答を得て、およそ1週間後に休業補助を支給する旨が労働者らに伝えられ、
「キヤノン本社の専務に志位委員長が直接要請したために、短期間での改善に至ったのではないか。期間社員の歴史は長いが、いまだかつてなかったことだ」
としている。対象者は約8900人で、総額は年間約3億円程度と、共産党では推定している。
一方、J-CASTニュースがキヤノン本社広報部の担当者に問い合わせたところ、「要請されたからではなく、社内的に話し合って決めたことだ」と回答した。時期についてはグループ各社により異なるが、すでに08年夏の休業補助を支払っているという。
期間社員は「使い捨て」という批判も
ところでトヨタ自動車をはじめ、大手製造業では同様の問題が起こっている。日本共産党では、「他社にも広めていく運動が必要となる。休業補助の支給は企業にとって数億円単位の支出となるが、労働者に当然支払うべきものだ」と話している。
また、期間社員という雇用形態のあり方についても、是非を問う声が高まっている。改正労働基準法が04年に施行されて、期間を限って雇用する有期労働契約の場合には原則3年以内とすることが決められた。そのためキヤノンでは最長で2年11カ月の雇用期間が定められている。正社員への登用制度はあるものの、期間社員という制度に対して「使い捨てではないか」という批判も出ている。