東京新聞や中日スポーツが、政治家や金メダリストを血液型で分析して話題になっている。A型の福田首相は保身、B型の北島選手は個人プレー、といったタイプ分けの記事だ。ただ、科学的根拠がないものを…などと批判も出ている。
A型の福田首相「何事もなかなか決められない」
東京新聞が血液型分析した福田首相
「少し軟らかく政治を考えてみよう」
東京新聞の2008年8月12日付コラム「即興政治論」では、こんなイントロから政治家の血液型分析を始める。記者が、政治の専門家ではない心理研究家にインタビューする形式だ。
研究家は、A型の人たちを「農耕民族」として、福田康夫首相を、天候の読みに慎重なように、「何事もなかなか決められない」タイプと分析。人の意見を聞き過ぎてリーダーシップを発揮できない部分があるとした。記者も「軸足の定まらない経済政策はそういう感じですね」と相槌を打っている。
一方、小沢一郎・民主党代表については、B型=「遊牧民族」として、「独断、即決、行動的」とみる。そして、他人の意見は聞かないことがあるため、大連立で早とちりしたという。B型の首相は浮いた存在になる可能性があるともしている。
さらに、同じ中日新聞社発行の中日スポーツが、今度は、北京五輪の金メダリストを血液型分析した。8月22日付記事では、ソフトボールを除く金メダル8個のうち、B型が4個とトップになったとして、B型の記者が「スポーツをするB型日本人に優越感を持たせてくれる」と書いた。B型のヒーローは、金2つを取った競泳の北島康介選手で、血液型研究機関の分析として、「チームプレーより個人プレーの方が伸び伸び力を発揮する」などとしている。
こうした血液型分析は、情報サイトや2ちゃんねるなどで話題になり、科学的根拠が薄く、偏見を煽りかねないなどと批判も出ている。
「科学的根拠がないのも十分に分かっています」
書かれた政治家や金メダリストは、どう思うのか。
福田首相の事務所からは08年8月22日中に回答が得られなかったが、民主党本部の役員室では、小沢代表の分析について、「血液型に何の根拠があるんですか。論評する以前の話です」とだけ話した。
東京新聞の記事では、B型の安倍晋三前首相について、「政権を投げ出したのも、B型らしい」「『美しい国』って言っても、国民は醒めてました」との研究家の話を紹介している。これに対し、安倍前首相の後援会顧問は、J-CASTニュースに、「そう感じただけでしょ。安倍は体調が悪く、日本のことを考えて引いたんですから。辞めたのは、B型だからではありません。血液型分析なんて、易者がやっていますが、当たらないことも多いですよ」とまくしたてた。
一方、北島選手のマネジメントをしているサニーサイドアップの広報担当者は、「たまたまB型であっただけで、血液型は関係ないと思っています。こういう分析でまとめたい気持ちは分かりますが、北島が金メダルを目標に日々努力してつかんだ結果です」と話す。
東京新聞の政治部長によると、インタビュー記事を疑問視する投書も1、2通来ているという。記事については、こう説明する。
「血液型分析について、わが社としての基準、判断はありません。しかし、人の性格を決めるとは思っていませんし、科学的根拠がないのも十分に分かっています。今回の意図は、政治面などとは違う紙面のコラムで、政治に素人の人の見立てを紹介しようと掲載したものです」
ただ、血液型分析の限界を知っていながら紹介したことについては、政治部長は、「血液型の本などが売れるブームなので、この人なりの血液型判断と理解してその見立てを紹介しました」と述べるに留まった。
中日スポーツの担当デスクも、「記事に『科学的な根拠はない』などと書いており、それを踏まえたうえでのものです。日本人は、血液型に関心が高いので、記事にしました。その内容で判断をお願いします」とだけ話している。