ソフトバンクがほとんど周知せずに、携帯電話の契約内容を変えていたことが分かった。無料で外装を交換する保証サービスを、一方的に2割自己負担にしていたのだ。同社では、予告なく変更できるとした規約を根拠にしたが、周知の必要性を認めて返金などに応じている。
「サービス内容は予告なく変更する場合があります」
ソフトバンク携帯では、一方的契約変更が問題に
京都府在住の30歳代の男性は、最近、携帯電話の折りたたみ部分が壊れたため、外装を交換してもらおうとソフトバンクの販売店に持ち込んだ。1年半前に買ったとき、店の担当者から、毎月約500円の保証サービス「スーパー安心パック」に入ったので外装を無料で交換できる、と説明されたことを思い出したからだ。
ところが、この販売店では、外装交換の8割引などを盛り込んだ「あんしん保証パック」に2007年10月から変わったとして、1万5000~8000円する費用の2割を請求された。男性が「納得できない」と反発すると、担当者は、「1か月間、カタログとホームページで周知した。また、規約には、『サービス内容は予告なく変更する場合があります』との条項がある」と言い張ったという。男性は、「当初の説明どおりに無償対応してほしい」と憤っている。
スーパー安心パックには、利用者の4分の1に当たる約490万件もの加入があり、国民生活センターによると、この男性のような苦情が08年3月から全国の消費生活センターに相次いでいる。5月末までに81件もあったという。
そこで、国民生活センターが調べたところ、ソフトバンクは、店頭での説明と違って、ほとんど周知していないことが分かった。わずかに、07年9月26日に公開したホームページ上の「あんしん保証パック」プレスリリースで、注に書かれていただけだった。同センター相談部では、「プレスリリースだったので、一般の消費者にはほとんど伝わっていませんでした。しかも、慎重に読まないと、一読しただけでは分かりにくいものです」とソフトバンクの対応に首を傾げる。
一方、ソフトバンクの広報担当者は、J-CASTニュースの取材に、「プレスリリースのほかに、請求書の同封物にも契約変更のことを書きました。契約者にメールを出さなかったことは、今となってはすみませんと言うしかありません」と答えている。
2か月間の交渉でようやく周知不徹底を認める
さらに、今回の契約変更トラブルで国民生活センターが問題にするのは、予告なしの変更をうたった規約の存在だ。
「私どもは、消費者に不利益になることを告知せずにいいんですか、と言いました。しかし、ソフトバンク側は、問題はないとの回答で、見解の相違があります」
NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」が出した質問状でも、ソフトバンク側は、回答で「議論のあるところ」と認めながらも、同様に予告なしの変更規約を根拠に挙げている。
消費者契約法の第10条では、消費者の権利を不当に制限する契約は無効と定めている。しかし、国民生活センターによると、契約変更トラブルは、個別案件ごとに裁判で決着していくしかないという。予告なしの変更規約は、クレジットカードなどによく見られるとしている。
国民生活センターによると、ソフトバンクは、同センターとの交渉で当初、プレスリリースで消費者に周知したので問題ない、と回答した。さらに、08年6月20日に改善の要望書を送付し、計2か月間の交渉でようやく周知不徹底を認めた。そして、スーパー安心パックに2割負担を適用した07年11月から08年7月までの外装交換については、契約者には返金することを明らかにした。また、8~10月を再周知期間としてその間の外装交換は無料で行う、などとしている。
ところで、ソフトバンクは、なぜ一方的に契約変更をしたのか。
京都消費者契約ネットワークへの回答では、営利目的による携帯の譲渡で外装交換が急増しており、過大な費用負担を防止するためと説明している。譲渡の場合、「破損した」として交換を求める例が多い、ということらしい。ただ、携帯譲渡が増えていることのデータを求めると、ソフトバンクの広報担当者は、「件数は増えていますが、数は分かりません。営利の譲渡は、確かにネットオークションぐらいでしょう」と説明するだけだった。