セブン&アイ・フードシステムズは、ファミリーレストラン「デニーズ」のメニュー価格を2008年9月11日から値下げする。「マクドナルド」を始め外食店舗メニューの値上げラッシュが続く中での決断に、「この時期になぜ?」という驚きが広がっている。外食産業を取り巻く環境はきわめて厳しく、「客を歩留まりさせるための大胆な賭けに出た」と見る業界関係者もいる。
「原材料費高の今、既存メニュー値下げは驚きだ」
大胆値下げに踏み切ったデニーズ
値下げするのはメーン料理、サラダ、デザートなど23品で、メニュー全体の約3割。下げ幅は10~110円。「選べるフライのハンバーグ デミグラスハンバーグ」が100円安い980円。「ツナとフレッシュ野菜のサラダ」が100円安い350円。「フルーツ ナタ・デ・ココ」が110円安い280円になる。セブン&アイ・フードシステムズ広報はJ-CASTニュースの取材に対し、今回の値下げについて、
「より多くのお客様にご来店いただきたい、ということで、お客様の求めるリーズナブルな価格設定にしました」
と話している。量は変えず、品質をさらに向上させるのだという。料理を提供するための様々なロスを徹底的に取り除き、「企業努力」によって値下げを実現させるのだそうだ。
ファミリーレストラン業界は、少子化やライバルとなる他業種飲食店の台頭によって年々業績が低下。日本フードサービス協会が発表した08年上期(1月~6月)の統計では、客数は4・4%減。売上高は3・6%減と落ち込んだ。特に08年上期は原油高の影響で車利用の消費者が来店を控え、メニュー価格を値上げした店舗が相次いだことも原因とみられている。そうした中での「デニーズ」の値下げ発表について同協会の広報は、
「値段の変更は新メニューで行うのが一般的だが、原材料費高の今、既存のメニューを値下げするのは驚きだ」
と話している。
ファミレス業界関係者は「顧客を増やすために大胆な賭けに出たな、という印象だ」と話す。ただし、仮に価格を10%下げたからといって客数が10%上がるといった単純な業界ではないそうで、
「うまくいけばいいのだが、ハンバーグを980円にしたところで、安いというインパクトを与えられるのだろうか。間違えば命取りになりかねない戦略だろう」
と指摘する。
ファミレスという名前や形態そのものが既に古くなっている?
「デニーズ」はファミレス各店の価格ランクでいえば中間に位置する。現在、ファミレスで一番苦戦しているのがこの中間の価格帯で勝負している店舗なのだそうだ。すかいらーくグループなどは多様な店舗展開をしていて、例えば「デニーズ」と競合する「すかいらーく」が苦戦した場合、「ガスト」などへの転換が可能だが、セブン&アイ・フードシステムズは「デニーズ」を中心とした展開だ。そのため、集客の戦略として「価格を変える」ことに着眼したのではないか、と先の業界関係者は見ている。実は、「デニーズ」は08年2月にも一部メニューを値下げしている。
先の業界関係者は、
「春の値下げ効果が得られなかったために、今回の大胆な値下げになったと思うが、価格云々よりも、昨今のファミレス業界の停滞はファミレスという名前や形態そのものが既に古くなっているのではないかという思いが業界内に出ている。ファミレスを支えた団塊の世代もシルバー層に移行する中で、抜本的な改革を考えなければ将来の展望が開けない時代になっているのではないか」
と話している。