「医師逮捕までする必要あったのか」 「大野病院」判決の新聞論調

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毎日社説は警察の起訴姿勢を擁護

   前出の4紙と、立ち位置が異なっているように見えるのが、毎日新聞だ。他の複数の新聞が、事件をきっかけに「医師の産科離れが進み、医療側からは『医療が萎縮する』との反発の声が上がった」といった経緯を紹介している一方で、毎日新聞は

「こうした考え方が市民にすんなり受け入れられるだろうか」

と、疑問を投げかける。さらに、「警察権力は医療にいたずらに介入すべきではない」としながらも、

「県警が異例の強制捜査に踏み切ったのも、社会に渦巻く医療への不信を意識したればこそだろう」

と、警察の姿勢を全国紙の中では唯一擁護しているともとれる文面だ。

   もっとも、その毎日新聞も、判決直後の08年8月20日夕刊1面の「解説」では、

「刑事訴追が医療の萎縮や医師不足を招くのは、医師と患者双方にとって不幸だ。お互いに納得できる制度の整備が急がれる」

と、若干のスタンスの違いを見せている。それは他紙でも同様で、読売新聞も、1面の夕刊の「解説」では、

「『医療行為による事故で刑事責任を問うべきでない』とする<医師側の論理>にお墨付きを与えたわけではない」

とした上で、

「医療界は患者の声に耳を傾け、より安全、安心な医療の確立に向け、冷静な議論をする必要がある」

と、社説とは一転、やや医療側に厳しいと読める文章になっている。

   このように各紙の間で論調が違うのはもちろん、同じ新聞でも朝刊と夕刊で論じ方が変化しているあたり、この問題の複雑さをあらわしたものだと言えそうだ。

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