経済産業省が、米アップル社製の携帯音楽プレーヤー「iPod nano(ナノ)」初代モデルに、充電中に過熱・焼損する事故が相次いでいるとして、注意喚起している。今回の事故で問題になっているのはまたもや「リチウムイオン電池」だ。
リチウムイオン電池内部に何らかの欠陥?
過熱事故が発表された「iPod nano」(経済産業省より)
経済産業省は2008年8月19日、米アップル社製携帯音楽プレーヤー「iPod nano」の初代モデルで充電中に過熱・焼損する事故が17件発生した、と発表した。同省によれば、08年1月に神奈川県で充電中に火花が上がったり、東京都で08年1月、8月にバッテリー部分が過熱して畳が焦げたり、下に置いていた紙が焦げるといった事故があった。このほかに軽度のやけどを負う事故も2件あった。製品の破損も含めてこうした事故が確認されているのは「MA004J/A」「MA005J/A」「MA099J/A」「MA107J/A」の4機種で、05年9月~06年9月に計約181万2000台が販売されている。同省は、こうした事故の原因は、リチウムイオン電池内部に何らかの欠陥があり、充電を繰り返すうちに欠陥部からバッテリー内部の損傷が拡大して、過熱に至った可能性があるとみている。
アップル日本法人は2008年8月20日、これらの事故についての公式見解を発表、過熱を感じたユーザーに対して顧客窓口で電池交換するとしている。
また、同社は、こうした事故の報告を何件か受けていることを明らかにした上で、
「すべて第1世代iPod nanoであり、(過熱事故があったのは)0.001パーセント未満です」
「これまで、重大な人的被害や物的損害は報告されておらず、また他のiPod nanoのモデルについてはこうした報告はまったく受けていません」
と述べている。また、
「これらは1つのバッテリー・サプライヤーからの供給であることを特定しています」
と供給元の1社のリチウムイオン電池が問題だったことを明らかにしている。
リチウムイオン電池の製造会社「明らかにできない」
アップル日本法人はJ-CASTニュースに対し、この1社について「公表していない」としているほか、なぜ「iPod nano」初代モデルだけで過熱事故が発生したのかということについて「正確に把握するための調査を行っている」と述べている。経産省商務流通グループ製品安全課でも、「製品の製造が中国で行われていることは把握しているが、バッテリーについては確認できていない」と述べており、問題のあったリチウムイオン電池がどこで製造されたものなのかは明らかになっていない。
リチウムイオン電池をめぐっては、06年8月にデル社製とアップル社製ノートパソコンで相次いで発火が発生して、ソニーが同社製リチウムイオン電池を全世界で自主交換することになったり、06年12月にはNTTドコモが、三菱電機製携帯電話機向けの電池パックに異常発熱の恐れがあるとして回収・交換することになるなど、発火・発煙・過熱の事故などが絶えない。ある携帯電話業界関係者も「電話機が薄かったりすると結構危なく、(回収対象端末以外の機器でも)充電を繰り返すことでまんじゅうのように膨らむケースがあった」などとも話している。リチウムイオン電池は、1回の充電で長時間の使用が可能だったり、軽量化が図れたりなど利点も多いが、負の側面も際立ってきてしまっている。