ビールの消費がもっとも伸びる夏真っ盛り。ところが最近は、「苦いのがイヤ」「オシャレじゃない」といった理由で、ビールを敬遠する若者が増えているという。大手メーカーはそんな若者に向けた新しいビールの開発に、本腰を入れ始めた。
「個性がはっきりしていないと、売れなくなってきた」
ビール各社は「オシャレ」な飲み方を提案している
大手メーカーのキリンビールは、若者をターゲットにした発泡酒「KIRIN Smooth(キリン スムース)」を2008年9月17日から発売する。低発酵にしたことで麦の甘みが出た。さらに低アルコール、低炭酸にして軽やかな飲み心地を実現した。
キリン広報は、
「パソコンを見ながら、ゲームをしながら、といった20~30歳代の若者に多い『ながらスタイル』に合う、軽い飲み心地を実現した。開発担当者自身も20歳代後半の男性で、同世代の意見を取り込んだ」
と話している。
同社では若者をターゲットとしたビール類飲料を07年10月から発売している。フルーティな香りと強めの炭酸が特徴の「キリン Sparkling Hop」は、テレビCMで、「シャンパングラスに注いで、グラスをくるくると回して飲む」というユニークな飲み方を提案した。飲み心地のよさだけでなく、オシャレに飲むというスタイルが若者に受けて、販売開始から3カ月間で、目標よりも2割以上も多く売れた。夏には氷を入れて「オンザロック」で飲むスタイルを提案している。
「ビール、発泡酒、カクテルやチューハイといったお酒の選択肢が増えて、嗜好が多様化している。そのため個性がはっきりしている商品でないと、売れなくなってきた」
ネットの書き込みを見ても、ビールが嫌いな理由の多くは「チューハイは飲めるけど、ビールはただ苦いだけしか感じません」といった苦味に関するものが多いが、「カクテルとかの方がお洒落」だといったのもあり飲むスタイルもポイントになっている。
チョコレート、黒糖、バニラ・・・甘~いフレーバーのビールも登場
アサヒビールも、発泡酒「アサヒ ジンジャードラフト」を08年10月21日から発売する。ターゲットとする20歳代向けに「ジンジャーエキス」を配合した。ジンジャーの刺激や辛さによってビール類特有の苦味が心地よく感じられ、サッパリとした後口になっている。
パッケージにもこだわった。深いグリーンを基調に、ゴールドをアクセントにしたファッション性の高いデザインだ。店頭では20歳代の社員が中心となって、サンプリングや販促活動を行い、年内は80万箱(1箱は大瓶633mL×20本)の販売を目標にする。
一方、どうしても苦味がイヤだという人には、甘~いフレーバーのビールもある。黒ビールを基調にチョコレート、黒糖やバニラ、みかんやりんごの風味がきいた、その名も「スイーツビール」だ。販売するサンクトガーレン(神奈川県厚木市)の広報担当者によると、購入者は20~30歳代が多く、「ビールは飲めないけれど、コレなら飲んでみたい」と買っていく若い女性もいるそうだ。
中でも黒糖ビールは男性の愛飲者も多くて、08年5月の販売量は出荷量ベースで前年同月と比べて2倍に伸びた。百貨店で売っているほか、カフェやバーでも扱っている。