北京五輪で男子日本柔道選手団のメダル数は、五輪史上最低の2個のみ(いずれも金)に終わった。そんな不甲斐ない結果に、日本女子柔道界の一角から「恵まれた境遇があだとなっている」と厳しい指摘が飛び込んできた。インターネット上でも「憂慮」の声が相次いでいる。
「普通のサラリーマンよりもはるかに高い給与を得ている」
日本の男子柔道選手団では、66キロ級の内柴正人、100キロ超級の石井慧両選手が金をとったほかはメダルゼロに終わった。金メダル候補だった鈴木桂治選手が1回戦、敗者復活戦ともに一本負けをした「波乱」もあった。04年のアテネでは金3個と銀1個の計4個だった。
こうした男子柔道の状況に「喝」を入れたのは、現役選手時代は「女三四郎」として知られた、筑波大大学院の山口香准教授だ。世界柔道の金メダルや、ソウル五輪(1988年)の銅メダル(公開競技)を取った経験もある。
2008年8月15日の日経新聞夕刊「千里眼」で、山口さんは次のように指摘した。柔道の日本男子の戦いについて他の関係者とも話したところ、「五輪に出るだけの準備を本当に積んだのか」と疑問を持った。監督やコーチが「選手を甘やかしていないか」という疑問があり、選手に任せすぎている。金2個を含む5個のメダルを取った女子との差については「そこに行き着くのではないか」と、男子陣の「甘え」を問題視した。
さらに山口さんによると、選手たちは競技に専念できる環境を与えられ、「普通のサラリーマンよりもはるかに高い給与を得ている」。海外選手の必死さに比べ「日本選手が無抵抗」なのは、「恵まれた境遇があだとなっている」と分析している。