民放キー局のワイドショーでは不定期出演になった梨元勝さん(63)。それが、加護亜依さんの独占インタビューに成功し、一躍脚光を浴びたのは記憶に新しい。その裏には、ジャニーズ批判を許さないテレビ局に抗し、着々とリベンジに備えてきた元祖芸能リポーターの執念があった。
7万人の会員で月100万円の収入
芸能リポーターの梨元勝さん
――梨元さんは、キー局ワイドショーのレギュラーでなくなって2年ほど経ちます。それなのに、なぜ元「モーニング娘。」の加護亜依さん(20)の独占インタビューに成功したのですか?
梨元 R&Aプロモーションの伊藤和之社長から2007年10月ぐらいに、「かわいそうだから、話を聞いてくれ」と加護さんを紹介されたんです。系列事務所に所属して芸能界に復帰するときでしたが、マスコミに取り上げてもらえるのか知りたかったようです。梨元なら圧力に屈しないから大丈夫だろうと思ったようですよ。聞いてみると、確かにかわいそうでした。一生懸命稼いでも父親の事業が失敗してしまう。両親が離婚したときに、2度目の喫煙をしたとのことでした。しかし、謹慎から1年経たないとまだ早いということになり、20歳の誕生日を過ぎて今年の4月6日にインタビューを公開したわけです。
――その場面はワイドショーでも放映され、「撮影オーマイニュース」とクレジットが入っていました。梨元さんは、どんな立場でインタビューしたんですか。
梨元 すべてのベースになっているのが、2005年6月に立ち上げたNTTドコモのケータイサイト「梨元 芸能!裏チャンネル」です。そこで記事や写真、40秒の編集動画を載せました。そして、同時に、撮影を担当したオーマイニュースで、より容量の多い動画サイトに分けて載せています。また、週刊朝日や東京スポーツ、テレビ朝日でもインタビューを紹介したわけです。1回60分の内容を、1週間のうちにいろいろなメディアに出したことになります。
――それはメディアミックスのようなやり方ですね。ケータイサイトにそんなに力を入れている理由を聞かせて下さい。
梨元 私が看板だったテレビ朝日のケータイサイト「芸能特報」がものすごくアクセスが増え、ドコモの芸能ニュースの1位になったんです。当時は280円の月額会費で70万人が会員になり、月2億円近い売り上げがありました。でも、私のギャラは月10万円超。「いくらなんでもひどい」と思って、独立して「裏チャンネル」を作ることにしました。24時間いつでも更新しており、「シンガポール社長、モナへの想い捨てきれず!!」といったスクープも出しています。右肩上がりで伸びており、(取材した8月5日は)芸能ニュースでは、テレ朝の「芸能特報」が9位なのに、「裏チャンネル」が4位ですよ。
――関係者によりますと、裏チャンネルは315円の月額会費で推定7万人の会員がいるとされます。これで、梨元さんは、月100万円ものギャラをもらっているといいますよ。十分食べていけそうですね。
梨元 自宅マンションのローンは終わりましたが、私の事務所はスタッフ2人を抱えていて(笑)、それだけでは無理です。だから、新聞・雑誌に原稿を書いたり、テレビに出演したりしているわけです。今後は、裏チャンネルを完成させて、大容量の動画も流せるようにします。また、自分のスタジオを持って、取材したことを生放送で定時発信したいですね。それをネットやテレビ、新聞などに配信するわけですよ。
ジャニーズ取り上げると、番組プロデューサーらから……
――梨元さんは、なぜキー局ワイドショーのレギュラーでなくなったんですか?
梨元 キー局は、もう情けない。ジャニーズ事務所のことを取り上げると、番組のプロデューサーらから「やばい」となります。だから、弱いところから攻めてるんですよ。私がワイドショーをやり始めたとき、芸能人に直撃するためどこへでも行こうという精神がありました。雑誌ジャーナリズム出身だったからです。人間を追いかける雑誌方式で、テレビを活性化するのが狙いでした。ですから、自主規制するとすれば、自分がやってることじゃない、見ている側も裏切ってしまうと思いました。取材する側が、真実を伝えるという精神から逸脱してしまうんですね。だから、キー局で時々出演するのは、もうTBSの「サンデージャポン」ぐらいです。
――確かに、ジャニーズへの対応に妥協できず、たびたびテレビ局と衝突していますね。やはりテレビ局は、ダメになったのですか。
梨元 キー局が頼んでいる制作会社の孫請けの人は、取材のことが分かっていないんですよ。昔は、ケンカするほど影響を受けたディレクターがいました。しかし、辞めるか飛ばされるかして、もういません。これじゃ、こっちが触発されませんよ。ディレクターらが、机に足を上げているようじゃダメなんです。テレビのコメンテーターも意味がありません。「離婚ですか? 愛がなくなったからじゃないですか」なんて、バカじゃないでしょうか。テレビがよく頼る記者会見は、スクープされて仕方ないからやるのです。本来は、最後の手段みたいなもの。ワイドショーは一回、解体しなさいということですよ。
――それでテレビに見切りをつけ、ケータイサイトに手を出したわけですね。
梨元 まず梨元チャンネルという取材母体を作って、ケータイとネットでやる。ほかのメディアは、向こうがほしいならどうぞということです。それが知恵です。加護さんの世代は、ケータイが分かりやすく、そこからの発信は説得力があります。彼女へのインタビューも、ケータイサイトのアクセス増を肌で感じました。情報はみなネットで探してきており、もはやテレビを見ろという時代じゃありません。加護さんもネットで、私のホームページを見ていました。彼女のインタビューを載せたオーマイニュースの動画は、アクセスが多すぎてパンクしています。今や動画の時代でもあるわけです。
――とすると、テレビはもう役割を終えたということですか。
梨元 テレビは、キー局以外ならいいですね。地方局のワイドショーは、ジャニーズ規制に対してイラスト援用のアイデアを出すなど、切磋琢磨していてとてもいい雰囲気です。だから、私は、九州から北海道まで、地方局の番組のレギュラーになっています。また、テレビは自由だったはずなのに、新たな展開はBSから生まれています。ですから、BSでテレビを立て直したいと思っているんですよ。地上波は、未だにある程度の影響力がありますから、お声がかかれば利用します。でも、どっぷり浸かるのはもう無理ですね。
【梨元勝さんプロフィール】
1944年、東京・中野区生まれ。法政大社会学部卒後、講談社「ヤングレディ」記者となる。76年に芸能リポーターとして独立し、テレビ朝日「アフタヌーンショー」に出演。「恐縮です」の突撃取材スタイルで話題を集める。その後、テレビ朝日を中心に、ワイドショーに出演。2005年からケータイサイト「梨元 芸能!裏チャンネル」をスタートさせ、ネット媒体でも活躍している。著書多数。