「不登校」の問題がクローズアップされるなか、2007年度の「不登校」の小中学生の数が2年連続で増加したことがわかった。文部科学省は「親の意識が『無理に学校に行かせなくても良い』と変化しているのでは」と見るが、専門家からは「これまでは無理に数字だけを小さく見せようとしてきたが、その『ゆり戻し』が来ているだけだ」と懐疑的な声があがっている。
親の意識が「無理に学校に行かせなくても良い」と変化?
文部科学省は2008年8月7日、全国の国公私立の小中学生1075万698人を対象に調査した「学校基本調査(速報)」の結果を発表した。それによると、病気などの理由がないのに1年間で学校を30日以上欠席した「不登校」の小中学生の数は、07年度が12万9254人で、2年連続で増加した。そのうち中学生は10万5197人で、中学生全体に占める不登校の割合は2.91%(34人に1人)。こちらは過去最高を更新している。
不登校の理由を複数回答で聞くと、「いじめを除く友人関係」が18.4%、「親子関係」が11.1%、「学業の不振」が9.6%、「いじめ」が3.5%などだった。
実は、不登校の小中学生数は、05年度まで4年連続で減少を続けていたのだが、今になって増加に転じつつあるのは何故なのだろうか。
文部科学省では
「自殺などへの懸念から、親の意識が『無理に学校に行かせなくても良い』と変化しているのでは」
とみているが、専門家からは「親だけが原因なのではない」と懐疑的な声もあがっている。
法政大学教授で教育評論家の尾木直樹さんは、増加の原因を(1)06年に自殺予告が相次いだこと(2)不登校が減少した4年間は「数合わせ」に過ぎず現場がその間違いに気づいた、という2点を挙げる。自殺予告については
「06年頃は、いじめ自殺が連鎖し、文部科学省にも自殺予告が届くなどしていたことから、『いじめで死ぬ位なら、やり直せる可能性がある不登校の方がましだ』という考えが広がったのは事実です」
と話すが、「05年度までの、不登校が減少したとされる4年間が『曲者』なんです」と指摘する。
不登校の生徒を無理やり保健室に登校させる
「この4年間は、不登校を減らすにあたって、文部科学省が数値目標を掲げるなど、成果主義が大流行したんです。文科省が『いじめによる自殺が7年連続ゼロだった』と発表したのも、その一環です」
と、成果主義が元凶だと話す。さらに、この成果主義は、単なるつじつま合わせしかもたらさなかった、というのだ。
「内実はというと、本来ならば不登校の生徒を無理やり保健室に登校させたり、(不登校にはカウントされない)『病欠』扱いにしたりと、つじつまを合わせていただけです。現場が『このやり方は間違っていた』と気づいた結果が、今回の調査結果に表れている、ということです」
さらに、「不登校を改善するためには、スクールカウンセラーを導入するよりも、現場の教師に役に立つようなことをするべきだ」と提言する。
「スクールカウンセラーは週2回しか出勤せず、相談相手としてはハードルが高すぎる。不登校が解消されたケースの多くは、生徒の自宅に電話をかけたり、家庭訪問をするなど、現場の先生の努力によるもの。スクールカウンセラーを整備するよりも、25人学級などの政策を進める方が先なのでは」