首都・阪神両高速が今秋にも予定中の距離別料金制について、トラック業界などから実質的な値上げになると異論が出ている。政府も高速道路料金の値下げを検討するほどのガソリン高だけに、反発も強いようだ。首都高などの利用が、さらに減ることにならないのか。
トラックは一律1400円が倍近い2400円になる
距離別料金制で渋滞は減る?
「距離別料金になると、現在の一律1400円が倍近くの2400円になってしまいます。30分が10分に短縮されるなどのサービス向上があるなら別ですが、制度が変わるだけなので納得できません」
首都・阪神両高速が導入予定の距離別料金制について、全日本トラック協会の矢島昭男常務理事は、こう不満を漏らす。
現行料金は、首都高東京線なら、普通車が一律700円。それが距離別料金のたたき台では、距離によって400~1200円だ。トラックは普通車の倍のため、長距離走れば、2400円の計算になる。首都高速道路会社が2007年9月20日に明らかにした計画では、08年10月からの導入予定になっていた。
ところが、空前のガソリン高で、状況が変わりつつある。
7月28日には、政府が、ガソリン高を考慮して、距離別料金導入を半年ほど先送りする方向とも報じられた。限度額1200円を1000円にする案などもあるとされている。それでも、トラックなら2000円だ。さらに、政府は8月6日、総合経済対策案の中で、利用者の負担緩和のため、高速道路の料金を値下げする方針を打ち出した。
トラック協会の矢島常務理事は、政府案について、「さらに引き下げて、最大で1400円のままでお願いしたい」と話す。「料金が高ければ、消費者の負担も増えますが、それは難しいのでトラックが一般道路を通るようになります。時間も守りにくくなりますし、道路が込むと、地域経済に影響が大きいでしょう。事故が増え、環境が悪化します」
「値上げ」で交通量が減少、渋滞がなくなる?
首都高では、原油高騰が始まった2007年12月から通行量が減り始めた。08年に入っても、1日当たりの通行台数は、4月を除き前年同月より減少。6月は、3.0%も減っている。天候や曜日配列の要因もあるが、ガソリン高の影響があるとされている。
首都高速道路会社の広報室によると、距離制導入で、利用者の半数弱が値上げになる。その場合、さらに、ガソリン高が続けば、利用者が減少して、一般道に流れる事態も予想される。
これに対し、広報室では、「安くなる短距離では、たくさん利用していただけると思っています。また、距離制に伴うETC普及などで、渋滞が少なくなれば、通行量が増えていくと予想しています」と話す。
自動車評論家の岡崎五朗さんは、むしろ首都高などの交通量減少を歓迎する立場だ。
「流れない高速道のほうがおかしいんです。『早く着く』という高速道路本来のサービスが向上するなら、多少の料金値上げなら反対する理由はありません。渋滞がなくなるならむしろ歓迎です。たとえば東名高速の東京インターから都心の霞ヶ関まで国道246号線と同じ50分かかっていたのが半分の時間になるのなら、1000円でも利用する人は出てくると思います」
トラックの利用については、「ETCを弾力的に運用し、トラックには特別措置のようなものを考えればいいでしょう」と提案する。