原材料や穀物価格の上昇が鮮明になってきて、「コモディティ市場」(商品先物取引)が注目されている。金、銀、原油、大豆、とうもろこし、ゴムと資源や穀物の価格が上昇するなかで、これを「逆手」にとって、儲けるのだという。ただ、個人投資家にとってはまだまだ敷居が高いのも事実だ。そうした中で、コモディティを組み込んだ投信が好調だという。
「金先物mini」個人取引が約半数に
「コモディティ」、商品先物取引といえば、聞き覚えがあるかもしれない。かつては「小豆相場でやられた!」などという文句を聞いたことがあるかもしれないが、そんなコモディティ市場が再び注目されはじめている。
ちょうど1年前、米国でサブプライム問題が表面化して以降、株価が下落。その一方で原油価格に象徴されるように、原材料や農作物の価格が急上昇した。ある商品先物業者は、「証券投資が低迷し、さらには米ドル安、インフレヘッジを理由に買われているようです」と話す。
金や銀、アルミニウム、原油にガソリン、とうもろこし、大豆など商品数は少なくないが、個人投資家が注目するのは、金や原油、穀物など「新聞などで相場情報がとれるもの」だという。
盛り上がりをみせるコモディティ市場だが、東京工業品取引所(TOCOM)は、「コモディティ全体としては低迷しているという感じ」と冷ややか。金や原油、穀物などの商品は需給関係以外にも、生産国の経済情勢や投資状況、相場の動き、為替差損(差益)も頭に入れておかねばならず、抑えておかねばならない点が少なくない。仕組みがむずかしかったり、リスクが高かったりと、「覚えることが多くて、ちょっと敷居が高いようです」という。
ただ、07年7月にはじまった「金先物mini取引」は、月間取引量(08年7月中)が88万枚(1枚100グラム約2万円)と、「取引量が増えてきて、そのうち、ほぼ半数の参加者が個人です」。金(現物)の高騰が連日のように伝えられるなかで、新聞やマネー誌、インターネットでは商品市況が株価と同じようにリアルタイムでわかるなど、得られる情報も増えてきた。投資金額が少額で高い収益チャンスが狙えるのはFXと同じ。株式やFX投資の経験のある個人投資家にとっては、もうひとつの分散投資先として考えられるようになってきた。
個人に買いやすい「コモディティ投信」も人気
TOCOMによると、国内のコモディティ市場はまだ発展途上らしい。「ロンドンやニューヨークは好調で、東京はひとり負けの状況です。海外市場は24時間取引が可能で、リスクを抑えられます。取引の利便性が劣る分、国内の投資家が海外に逃げていってしまっています」。まだまだ、商社などの法人取引が中心で、個人向け営業ははじまったばかり。個人投資家の目がせっかくコモディティに向いてきたのに、「売る側」がもたついているようでもある。
そんな中で、個人向けにはコモディティを組み込んだ投資信託が、現物よりもリスクを抑えられると、人気上昇中だ。株式投信が伸び悩んでいて、投信業界としても「コモディティ投信」に寄せる期待は大きい。7月に発売したばかりの「日興インフレ戦略ファンド」は、コモディティや物価連動型債券などを組み込んだ投信で、純資産総額は約390億円(8月4日)と好調な出足となった。
投資信託協会で分類された22のコモディティ投信の純資産総額は、1233億円と小粒ではあるが、インフレを追い風にまだ伸びる可能性がある。