「日本の食品業界にはプレイヤーが多すぎる。再編成の時期に入ったのではないか」
2008年8月2日放映のBSジャパン「直撃!トップの決断」に出演した味の素の山口範雄社長は、放映に先立つ収録で番組キャスターの私に、こう胸のうちを打ち明けた。味の素はすでに味の素ゼネラルフーズ、カルピス、ギャバン・ヤマキなど大手食品メーカーとの業務提携を実現しているが、まだまだ物足りず、大型M&A(企業の合併・買収)に強い意欲を示したものとして注目される。
山口社長はM&Aの対象を、主として食品企業を念頭において発言したが、味の素では透析などに使う輸液やアミノ酸から派生した栄養豊富なリジンを畜産飼料に活用するなど医療・医薬関連商品を手がけており、医療・医薬メーカーとのM&Aの可能性も否定しなかった。味の素は日本最大級の食品メーカーでキヤッシュフローも豊富。M&A資金も潤沢で今後予想され日本企業のM&Aの台風の目となりそうだ。
くしくも今年は1908年7月に池田菊苗博士が「うまみ調味料」のもととなるグルタミン酸ナトリウムの製造特許を得てから100年。2009年は味の素の創業100周年となる節目。グルタミン酸ナトリウムを発見した池田博士は、豊田佐吉の織機、御木本幸吉の養殖真珠、高峰譲吉のアドレナリン、鈴木梅太郎のビタミンB1,杉本京太の邦文タイプライター、本多光太郎のKS鋼、八木秀次の八木アンテナ、丹羽保次郎の写真電送方式、三島徳七のMK磁石鋼と並ぶ日本の10大発明家の一人。この節目に100年後の歴史に残る偉業に挑戦したいという意欲がありありだった。
【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。BSジャパン解説委員。
元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授。BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスター。著書に「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)など多数。