グーグルが新たに展開した「Street View(ストリートビュー)」機能。東京や大阪など12都市の主要道路のあらゆる地点で360度の風景の写真を閲覧できるサービスだが、これがインターネット上で大きな反響を呼んでいる。写真に偶然写りこんでいる変な光景などが話題になり、まとめサイトまで登場した。一方で、「犯罪者が場所を物色するのに便利だ」と「悪用の危険性」を指摘する専門家もいる。
男女のキスや男性の立小便写真でネット大騒ぎ
グーグル「ストリートビュー」での「変な写真」で大騒ぎ
グーグルが2008年8月5日に提供を発表した「ストリートビュー」機能。同社が提供する地図サービス「Googleマップ」の新しい機能で、札幌・小樽・函館・仙台・東京・埼玉・千葉・横浜・鎌倉・京都・大阪・神戸の12都市の主要道路からの光景を見ることができるというものだ。衛星写真の表示時と同様に「ストリートビュー」ボタンを押すと、道路からの写真を見ることができ、ユーザーが360度回転させたり、上下に動かしたりして、建物を見渡したり、写真を拡大することもできる。これらの写真はグーグルがカメラを搭載した車を使って撮影したものだが、道路という道路の写真が継ぎ目なく撮影されており、あらゆる道路を実際に自分が移動しているかのような体験ができるよう編集されている。
インターネット上ではあらゆる場所の写真が閲覧できることで大騒ぎになり、まとめサイトまで登場した。
たとえば、横浜のある路上では男子高校生が女子高生の胸に手を当て、キスしていると思われる写真、相模大野の路上では中年男性が立小便をしていると思しき写真が話題になっている。また、「ストリートビュー」は歓楽街の路上までをも撮影しており、ラブホテルに入る男女の姿や、風俗店の写真を見ることができ、この地点を表示するURLが掲示板などに相次いで貼り付けられていたりする。過去の事件現場や有名人の自宅なども話題になり、ネット上では大騒ぎになっているといったところだ。
「侵入しやすい地域や逃げ道をある程度把握することができる」
「ストリートビュー」機能には、識別可能な人の顔やクルマのナンバープレートをぼかす技術が用いられてるほか、ユーザーが不適切と判断した写真については、削除対象として警告することができる。とはいえ、ベランダに干した洗濯物が映っている写真もあり、プライバシーという点では問題点もありそうだ。
実際、07年5月から「ストリートビュー」が展開された米国ではプライバシー侵害を理由に訴訟も起こされており、英国でも「強盗のガイドブック」になるといった批判も噴出し、物議を醸した。なお、複数の米メディアによれば、グーグルはプライバシー侵害裁判の公判のなかで、「完全なプライバシーなど存在しない」などと主張し、これに反論したのだという。
東京防犯センターの斉藤明広代表はJ-CASTニュースに対し、「ストリートビュー」の登場によって犯罪が増加するかは不明との見方を示した上で、
「侵入犯罪に使われる可能性は十分にある。侵入しやすい地域や逃げ道をある程度把握することができる。(侵入犯にとって)物色するのには便利だ」
と指摘している。侵入犯罪では侵入する建物の住人の行動などを下見するケースが多いが、その前に侵入できそうな住宅を物色するのに「ストリートビュー」が役立ってしまう可能性があるという。ネットユーザーから「すごい!」といった驚きの声が相次いで上がるほど便利な機能ではあるが、ドロボーにとっても同様に便利、ということはいえそうだ。