国土交通省が自転車専用道構想 10年度から20都市で

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   国土交通省は自転車専用道路(自転車道)を2010年度から本格的に整備する方針を明らかにした。主要都市を20か所程度選び、自転車道を整備するが、10年はかかるという大規模なプロジェクトだ。自転車と歩行者が接触する人身事故が増え、専用道の拡大整備に踏み切った。

専用道は全国で2500kmしかない

東京都渋谷区幡ヶ谷に設置された自転車道
東京都渋谷区幡ヶ谷に設置された自転車道

   自転車と歩行者が接触する人身事故は、ここ10年間で約4.8倍に増えている。携帯電話を使用しながら運転したり、スピードを出しすぎたりといった利用者のマナー違反が原因だ。また、歩行者や自動車と道路を共有していることも事故につながっている。自転車が走れる道路のうち、専用道は全国で2500kmとわずか3%程度だ。

   こうした状況を受けて自転車道の整備に乗り出すことになった。道路局道路交通安全対策室によると、候補都市はまだ決まっていない。有識者を集めた会合を開いて検討を進め、09年度中には決まる予定だ。その先駆けとして、北海道から沖縄まで全国98地区のモデル地区で、歩行者・自転車・自動車の道路を分離するという試みが08年1月から始まっている。

   その1つである東京都江東区亀戸では、亀戸一丁目交差点から水神森交差点までの約0.4kmの区間に幅2mの自転車道を設けた。自転車道と車道の境界には柵や縁石を置いた。08年度中にさらに0.8km延長する。東京都渋谷区幡ヶ谷では、幡ヶ谷不動尊入口交差点から幡ヶ谷二丁目交差点までの約1.2kmの区間に設置した。幅1.5mで自動車道との間に柵はないが、道路を青色に着色して目立つようにした。

   ただ、スムーズに整備できた地区ばかりでないようだ。国土交通省道路局道路交通安全対策室の担当者が自治体に経過を聞いたところ、いくつかの問題点が浮かび上がってきた。

「家の前に作ってほしくない」「商店街の中や、店の前は困る」

   自転車道の整備に欠かせないのが地域住民の理解だ。専用道にした方が安全だという意見は多く、総論的には賛成が得られるという。しかし具体的に話を詰めようとすると、「家の前に作ってほしくない」「商店街の中や、店の前は困る」といった声が上がる。路上駐車の取締りが厳しくなったとはいえ、客が店の前にとめるのは事実上黙認されている。仮に自転車道が設置されれば駐車できなくなり、地域住民の目もあって利用者が減る。そうなれば客足にも悪影響しかねないというのが反対の理由だ。

   また、設置後にはこんな問題もあるようだ。新しくできた自転車道には、ゴミ袋が置かれるという嫌がらせが発生している。堂々と自転車をとめる人もいる。また、携帯電話で通話しながら運転したり、なかにはメールを打ちながら乗ったりする人もいる。さらに、自転車道なのに歩行者が使っていることもあった。せっかく専用道を作ってもこれでは意味がなく、国土交通省では「道路を作るだけではだめなようだ。もはやモラルの問題だが、自転車マナー向上の啓発活動などを自治体と協力して行う必要がある」としている。こうした問題をどう解決するのかが、ネットワーク建設の成功の鍵を握っているとも言えそうだ。

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