2008年上半期(1~6月)の世界販売台数で、トヨタ自動車(子会社のダイハツ工業、日野自動車を含む)が、米ゼネラル・モーターズ(GM)に27 万台の差をつけ、07年上半期に続いて世界首位に浮上したことが分かった。米市場での大型車の販売不振にあえぐGMに対し、トヨタは善戦した格好だ。しかし、トヨタの販売台数も伸び悩みが目立っており、トヨタ自身、異例の自動車価格引き上げの検討に入るなど厳しさは増している。
上半期の米国新車販売台数が7%減
トヨタの上半期の世界販売台数は前年同期比2.2%増の481万7941台で、上半期ベースでは過去最高を更新した。一方、GMは同2.9%減の454万409台に減少した。GMは個人消費の低迷やガソリン価格高騰により、主力の大型車の販売が大きく落ち込み、米経済悪化の直撃を受けたといえる。
この結果、07年の年間の世界販売台数で、GMにわずか3000台の小差で破れたトヨタは、08年には念願の世界首位を手中にする可能性が高まってきた。実際、トヨタは07年10~12月期から今年4~6月期にかけ、3四半期連続でGMをしのいで世界トップに立っている。
しかし、トヨタ内部から「こんな状況では、世界一になっても関係ない」との嘆息が漏れるように、トヨタ自身の現状も決して明るくない。上半期の世界販売の伸び率は2.2%増で、かろうじてプラスを維持したとはいえ、同様のデータの公表を始めた99年以降では最低の伸びだ。「トヨタの成長路線が曲がり角にきている」(自動車業界関係者)との声は少なくない。
トヨタにとって最大市場である米国では、上半期のトヨタ単独の新車販売台数が同7%減となった。車離れが進む日本での販売も同2%減。欧州(ロシアを除く)も同7%減と先進国市場は軒並み下落している。中国では同34%増と好調で、先進国の不振を新興市場で補っているが、トヨタは元々、日米欧の3市場で販売の7割近くを稼いでおり、先進国の厳しい販売不振の打撃は大きい。たとえ新興市場に重点を置いても、新興市場向けの車は先進国に比べて利益率が低いという問題も残る。
高級車を中心に国内価格を1~3%値上げ
こうした中、トヨタは米国での生産体制の見直しに必死だ。大型車製造のために建設していた工場を、売れ筋のハイブリッド車「プリウス」の製造に変更したり、大型車用の工場を8月から3カ月間休止したりするという思い切った措置も決めた。
一方、トヨタは現在、高級車を中心に国内価格を1~3%値上げする方向で調整している。モデルチェンジなど車種改良時以外の値上げは極めて異例だが、「原材料価格の高騰がコスト吸収努力ではカバーできない」(トヨタ関係者)ためだ。
生産体制の再構築と価格戦略の見直しを急ぐトヨタは、今や「世界一」に浮かれるどころか、正念場を迎えている。