日韓双方が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)をめぐる米国の対応が二転三転している。政府委員会の「地名委員会」(BGN)が、もともとは「韓国」とされていた竹島の帰属先を「主権未確定」と変更したところ、韓国側が猛反発。訪韓を直前に控えたブッシュ大統領の意向で、再び「韓国」に戻されたのだ。韓国側はこれを歓迎しているが、日本側は韓国世論を意識してなのか、抗議の予定はないことを明言している。
ブッシュ大統領がライス国務長官に再検討を指示
発端は、BGNのウェブサイトの検索結果が、いつのまにか変更されていたことに始まる。2008年7月20日ごろまでは、同機関のウェブサイトで、竹島の別名である「リアンクール岩礁(Liancourt Rocks)」と入力すると、帰属先として「韓国」と表示されていたものが、いつの間にか「主権未確定地域」(Undesignated Sovereignty)に変更されていたことが発覚。これを7月26日ごろから韓国メディアが問題視、韓国政府の対応不足を非難した。7月28日には、駐米韓国大使が米政府に抗議するという事態に発展した。
同日開かれた会見では、米国務省のガレゴス報道室長が
「(日韓の)どちらも支持しないというのが米政府の長年の立場」
「政策変更ではなく、政策との整合性を取った」
などと説明。韓国側からは、8月5日から始まるブッシュ大統領の韓国訪問に対する影響も懸念する声が相次いだ。
ところが、7月30日になって、この方針が一転。米国家安全保障会議(NSC)のワイルダー・アジア担当上級部長が、
「現時点では、変更には正当な根拠がない」
として、帰属先を「韓国」と戻す決定が下ったことを明らかにしたのだ。同部長によると、韓国政府が「極めて高いレベル」で米政府に帰属先の見直しを要求したことを受けて、ブッシュ大統領がライス国務長官に再検討を指示したのだという。一方で「変更についてわれわれの政策が変わったと韓国民に受け止められたことを遺憾に思う」とも述べており、米国の政策に変更がないことを強調している。現在では、BGNのウェブサイトを検索すると、帰属先は「韓国」と表示されるようになっている。
韓国のマスコミ報道は「祝賀ムード」で過熱
これを受けて、大統領官邸・青瓦台のスポークスマンは
「米国の迅速な対応は、米韓二国間の指導者の深い信頼関係と友情を反映したもの」
と高く評価。さらに、韓国政府高官が公共放送のKBSに語ったところによると、8月6日の首脳会談までには、この「名称問題」を決着させる考えだという。政府・与党のみならず、野党も、米国側の対応を歓迎している。
これに対して、町村信孝官房長官は7月31日の会見で、ブッシュ大統領の指示で変更が行われたことを念頭に、福田首相から抗議を行うかどうかについて問われると「ない。何故必要なのか」と、明確に否定。「米政府の一機関のやることに過分に反応することはない」とも述べた。
若手議員などからは「何もしなくていいのか」などと政府の弱腰ぶりに批判が出る可能性がある一方、7月31日夕方には各紙が「福田首相が8月1日にも内閣改造を断行」といっせいに報じたことから、政界の関心は内閣改造に集中、竹島問題への関心は盛り上がっていないようだ。
韓国側は、半ば「祝賀ムード」に近い一方、日本側は沈黙を守っている形だ。
「祝賀ムード」を受けて、韓国のマスコミ報道は過熱気味だ。例えば、KBSが7月31日に伝えたところによると、韓国の議員団が国務省のヒル国務次官補を訪ねた際、東アジア・太平洋局の会議室にあった地図に「Dokto(独島)」という表記があった、というのだ。
にわかには信じがたい話だが、このような話を、一国の公共放送が堂々と報じるあたり、現在の韓国における「独島ブーム」を裏付けているとも言えそうだ。