インターネット上に書かれた殺人予告、爆破予告などの悪質情報を収集し、警察に通報するサイト「予告.in」管理人の矢野さとるさんが、自身も「殺害予告されていた」ことをテレビの報道番組で明らかにした。しかも、「2ちゃんねる」などには、「ネットで言葉狩りをして成り上がろうとしている」といったバッシングさえ出ているのだ。
「さすがに一人で運営するレベルでなくなってきている」
ネット上の犯罪予告を共有するサイト「予告.in」
矢野さんが出演したのは2008年7月29日放送のTBS系報道番組「ニュース23」。番組では殺人予告情報などが次々に矢野さんのケータイ電話に寄せられる様子や、忙しそうにサイトを管理する矢野さんの姿が映された。寄せられる情報は1日平均70件。警察に矢野さん自身が通報、検挙につながったケースが08年6月12日に開設してから28件あるのだという。
「犯行予告を無くすための抑止力になればいい」と始めたサイトだが、運営しているうちに恐怖を感じることがあるのだという。矢野さんは、
「僕自身に対する犯行予告が出てきてしまったり、さすがに一人で運営するレベルでなくなってきている」
と話した。
矢野さんに対する犯行予告を「予告.in」で検索してみると、08年7月26日に「2ちゃんねる」に立てられたスレッドに、
「矢野さとるとその家族皆殺しにする」
というものが見つかった。「予告.in」にはこの予告に対する管理人のコメントがあり、
「内容に関しては捜査上の事もあるので詳細は書けませんが、警察に通報をした結果、自宅まで私服の警官が数人来て、経緯や内容を説明しておきました」
と、警察に捜査を依頼したことなどが書かれている。
「予告.in」なくしネット監視を国家に委ねるのか?
矢野さんが「予告.in」を始めたきっかけは08年6月11日に起こった秋葉原無差別殺傷事件。容疑者が犯行予告や犯行直前までの様子をインターネット上に書きこんでいたことだった。凶悪事件を阻止するために、こうしたサイトの登場はかなり有意義で、賞賛する人は多いのだが、一方で「2ちゃんねる」を中心に、相当数のバッシングが出ているのだ。
バッシングの中身は、監視されているようで「息苦しい」というものから、「イタズラで書いたものまで通報され、犯罪者に仕立て上げられる」「逆に殺害予告を増やしている」「ネットで言葉狩りをして成り上がろうとしている」など様々だ。テレビ放送後に一層激しくなり、サイト自体を潰そうと呼び掛けるカキコミや、「矢野死ね」など犯行予告に近いものが大量に出てきた。
矢野さんはテレビで、
「国で運営していただければ、僕がチェックする必要がなくなりますからね。ある程度、(国に)打診していますが、なかなか難しいですよね」
などと、自己運営の難しさを語っていた。
ITジャーナリストの井上トシユキさんは、バッシングに負けずに「予告.in」を矢野さんは運営していくべきだという考えだ。「予告.in」はネットユーザーがボランティアで犯行予告を見つけて通報。なんとかネットを良くしていこうという「自警団」として成長している、と見ているからだ。
「自分の意に沿わないからとバッシングしているが、では、『予告.in』を無くしネットの監視を国家に委ねるのか、となると、ネットでの活動の自由が脅かされる可能性も否定できない。もっと先を予測するべきだ」
と話している。