起業を目指す大学生が高額なスーツを買わされる被害が最近になって頻発し、消費者センターが注意を呼びかけている。インターネット上や大学内で「起業のための人脈作りが学べる」などと誘われ、「まずは身なりから」ということで高額なオーダースーツを購入させられるというものだ。被害者はSNSのプロフィールに起業家志望などと書き込んだことで業者のターゲットにされたようだ。
「企業の人に会うにはまずはオーダースーツが必要だ」
起業家志望学生を狙って高級スーツを売りつける商法が相次ぐ
東京都消費生活総合センターによれば、2008年6月下旬からこれまでに16件の被害相談があった。実際はこんな感じだ。
大学生がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に起業家希望とプロフィールに書いていたら、「君に最適な環境を紹介する」と誘われた。カフェで会うと「一流企業に勤める人とふれあい、自分を成長させる経験を積むことができる」と言われた。そして、「企業の人に会うにはまずはオーダースーツが必要だ」などと言われ、高額なスーツを購入させられたという。
また別の大学生は、SNSで知り合った知人から1日10万円稼げる話を聞いて事務所を訪れたところ、19万円の高額スーツ購入が条件と言われ、契約を結んだ。「ビジネストレーニング」などと称して、「とにかくアポを取れ」と友人のアドレスを書き出すよう言われた。
36万円のオーダースーツを購入させる
東京都消費生活総合センターはJ-CASTニュースに対し、
「(被害にあった)皆さんはどなたも起業家になりたい、キャリアアップしたいという方々で、人脈が広がるといった誘いを受けて高額なスーツを買わされるというパターンです。業者は不特定多数を勧誘しているのではなく、SNSのプロフィールで起業家志望であることを書いた人が誘われるという傾向がある」
と説明している。学生は起業家になりたくてまずは20万円ほどのスーツを購入させられるが、いつの間にか「スーツを売ると儲かる」と誘われ、他の人にもスーツを買わせるように指示されるという。被害者には未成年も含まれており、最近になってこうした相談が急増したため、都では大学などに注意喚起をはじめた。
同じようなケースは神奈川県や千葉県でも相次いでいる。神奈川県では、こうした勧誘を「営業」として学生にやらせ、50万円を売り上げさせる、という例もあった。また、千葉県では、「自分を変えるためのビジネストレーニング」と称して、「まずは身なりから」と言って36万円のオーダースーツを購入させたという例もある。
神奈川県のかながわ中央消費生活センター では
「起業セミナーの交流会等でマルチ商法の組織に勧誘するケースが見受けられます。相談者の希望するような結果にはならない事例が多くなっていますので、セールストークに惑わされず、契約する際はよく内容を確かめ、十分検討するようにしましょう」
とホームページで呼びかけている。