厚生労働省の研究会は「日雇い派遣の禁止」を盛り込んだ労働者派遣制度改革の最終報告書を2008年7月28日に公表した。同省はこの報告書をもとに秋の臨時国会に同法改正案を提出する予定だが、日雇い派遣が生んだ「新しい貧困(ワーキングプアやネットカフェ難民)の根本的解決にはならない」という批判も出ている。
「『日雇い派遣』はやめていただくということです」
この報告書は、「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」(座長:鎌田耕一東洋大学法学部教授)が08年2月から11回にわたり検討、まとめられた。
厚労省の説明によると、「日雇い派遣」は「日々または30日以内の短い期間、契約を繰り返しながら労働者を派遣する」ことを指す。契約が短期で生活が安定しないだけではなく、労災の適用や雇用管理責任者が誰なのかが曖昧で、問題だという議論が以前から出ていた。このため、今回は派遣労働者の保護と雇用の安定を図るため、「日雇い派遣の禁止」を謳った。厚労省はJ-CASTニュースに対し、
「派遣会社には様々な雇用契約がありますが、法案が通れば『日雇い派遣』はやめていただくということです」
と話した。ただし、「日雇い派遣」の何をどの範囲で禁止するかは、これからの審議会で検討するのだという。
派遣大手のフルキャストでは、日雇い派遣を行う場合、働く日数だけ労働者と派遣契約を結び、終了すれば契約は切れる。殆どの日雇い派遣会社の仕組みはほぼ同じだ。今回の法案が通ると、日雇い派遣会社としての存在が失われる。
アルバイトや副業、一時的なつなぎとしては有用な働き方
「しんぶん赤旗」は08年7月29日付けの電子版で、
「規制緩和から規制強化に転じるものであり、派遣法の抜本改正を求める労働者・国民の世論と運動の反映です」
とこの報告書を評価している。そして、非人間的な日雇い派遣や30日以内の短期派遣を原則禁止することは当然だが、さらに、
「首切り自由の使い捨て労働をなくすために『登録型派遣』を増大させた1999年の原則自由化以前に戻すことが求められます。常用型派遣(常用雇用)を原則にして、登録型を厳しく制限しない限り解決できない」
と主張している。
しかし、これで問題がすべて解決というわけではない、という見方も強い。日本総研は08年7月29日付けで同社ホームページ上に「日雇い派遣禁止・派遣規制強化は妥当か」と題した論文を掲載した。「日雇い派遣禁止」という一見分かりやすい対応が問題の本質を見えなくしてしまうという内容だ。日雇い派遣は昔から存在し、仕事のやりかたの一つとして定着、学生アルバイトや副業、一時的なつなぎとしては有用な働き方だと指摘している。ワーキングプアやネットカフェ難民の温床と捉えているのがそもそもの間違いで、
「現実には一定程度の不安定・未熟練雇用が生まれてくることは避けられない」
としている。そのうえで、必要以上に増えない仕組みをどう構築するか、正社員との間の処遇均衡化を目指し、未熟練労働者の能力開発や生活保障をどう図っていくか、という問題に正面から向き合うことが求められている、と書いている。