「貸し渋るのは金融庁の指導があるから」
「銀行が特定の業者に貸し渋るのは金融庁の指導があるから。それはまぎれもない事実だ」。そう反論する、ある地銀の幹部。地方経済にとって、地元の建設業者の影響力はとても大きく、地元経済を支えているといっても言いすぎではない。それゆえ、地元の建設業者の生死は銀行の経営にとっても大きく響く。簡単に倒産されては銀行も困るわけだ。 もっとも、すぐに倒産されては困るが、追加融資したあとに「ダメでした」ではもっと困る。建設・不動産業者向け融資については、金利優遇制度の対象外にするなど「選別」を強める一方で、各都道府県の保証協会付き融資による支援などで対応、「リスクを測りながら、その都度対応している」と説明する。最近は金融当局ばかりでなく、地元自治体からの支援要請も頻繁にあって、とにかく「貸してほしい」といって頭を下げるという。
こうした中で金融庁は、8月からはじまる08年度の金融検査で、建設・不動産向け融資について、実態を把握し、検証していくことを、全国地方銀行協会や第二地方銀行協会を通して各銀行に伝えている。月1回開かれる例会に集まった頭取らに金融庁の幹部は、「決算書だけで判断することなく、経営実態をよく把握して、みていってほしい」とやんわり話した。
しかし、銀行側は「これは責任をなすりつけた犯人さがし」と受けとめている。「そもそも当局に寄せられた苦情がきっかけなので、あたりもついているようだ」(地銀の幹部)。
金融庁は、建設・不動産向け融資を新たに重点項目に加えるかどうか、について「答えられない」と話し、8月中旬の公表を待ってほしいとした。ただ、渡辺金融相も「検査を言い訳にしていないかどうかも、きちんと検査の対象にする」と言及している。