石川県警の女性警官が、警察は「給料がいい」などとPRするサイトが話題になっている。警察はどこも人材難に悩んでいるが、このサイトの効果もあってか、同県警の受験者は増加に転じたという。もっとも、いざ警察官になれば、やりがいがあっても、激務なのには変わりがない。
大学院を1か月で中退して県警入り
顔写真まである「ミキティの部屋」
石川県警本部のホームページから、「ミキティの部屋」のサイトに入ると、いきなりショートケーキの絵が目に飛び込んでくる。ピンク色の格子柄を背景にしたデザインは、とても警察のサイトとは思えない。
「現職女性警察官が赤裸々に告白します。チョットのぞいてみませんか?」
サイトでは、そんなキャッチフレーズとともに、ミキティこと、コジマミキ巡査部長自身や警察の紹介が、親しみやすい言葉でつづられている。
そこでは、ミキさんは当初、「警察官には全く興味がありませんでした」と告白。それでもなろうとしたのは、給与面の良さに惹かれたからだという。「給料がいい この不景気にスゴイなぁ」と思ったと、率直に打ち明けている。そして、警察官の仕事を知るようになってから、次第にやりがいに目覚めていったとしている。
ミキさんは、1970年代生まれで、石川県内の大学院を1か月で中退して、2000年に石川県警入り。交番勤務や交通指導取締係などを経て、06年3月から県警本部警務課の企画係などをしている。
ミキティの部屋は、06年8月に開設した。最近も、警察学校で取材した記事を更新するなどしており、ネット上でも時々話題に上っている。
石川県警警務課では、サイトを開設した理由について、団塊世代の大量退職に伴う人材不足のため、警察官の応募者を増やしたかったと明かす。
「警察は、敷居が高くて、組織が分かりづらいという声を多く聞きました。しかし、通常の語りかけでは、なかなか関心を持ってもらえません。そこで、できるだけ等身大の警察官の姿を伝えようと、女性警官を選んで、ある程度、自由に書いてもらいました」
ミキティの部屋については、「人間味ある内容に好感が持てる」「警察のページとしては面白い」との声が寄せられているという。批判的なメールや電話などはほとんどないとしている。
夜間や休日の呼び出し、長期出張…
全国の警察では、団塊世代の大量退職から、2015年度までに警察官の約4割が入れ替わるとされている。同様な問題を抱える民間企業が採用を拡大したり前倒ししたりしており、警察も、人材難が深刻になりつつある。警察庁の発表によると、警察官の94年度の競争倍率は全国平均で26.6倍だったが、06年度は7.1倍にまで落ちた。
各地の警察も、人材難を解消しようと、あの手この手のPR合戦に懸命だ。警視庁などが民間企業ばりのリクルーター制度を導入したり、神奈川県警が漫画家の望月三起也さんの描いた採用ポスターを作成したり。石川県警でも、競争倍率の低下は深刻で、リクルーター制導入や就職説明会開催などに取り組んでいる。
こうした試みやミキティ効果もあってか、石川県警では、減少傾向にあった警察官採用試験の受験者数が増加に転じた。07年度の受験者数は、前年度の224人から増えて397人になったのだ。警務課では、「石川県内では、他の民間企業よりも給料はいい。ネットをよく使う若い人がサイトを見て、県外の大学から地元に戻ろうという人が増えてくれれば」と期待する。
ただ、ミキさんがサイトで書いているように、警察官になれば、夜間や休日の呼び出しや長期出張、異動による引越しがあり、不規則な生活が待っている。また、秋葉原通り魔事件など犯罪の凶悪化も指摘されており、やりがいがあっても、激務なのには変わりがない。