「10回以上実験し、お湯が先に凍ることを確かめている」
一方、NHKでは、番組として問題がないとの立場だ。
広報部では、J-CASTニュースの取材に対し、こう説明する。
「事前の予備実験を10回以上も行って、お湯が先に凍ることを何度も確かめています。また、番組では、このメカニズムについて、気化熱が関係しているのではないかといういくつかの仮説も紹介しています」
番組制作に当たっては、北大低温科学研究所の前野紀一名誉教授が監修したとしている。さらに、「その監修に沿って、番組では、まだ未解明の部分が多いことにも触れています」と理解を求める。
大槻名誉教授とNHKは主張が対立している形だが、物理学界では、ムペンバ効果をどう見ているのだろうか。
J-CASTニュースが、何人かの専門家に聞いたところ、ムペンバ効果を知る人はいなかった。
そのうち、ある国立大の講師は、この効果のことを話すと、懐疑的な見方をした。「水は高温にすると、泡が出て空気が抜けます。ゴミなどの不純物があればそれを核にして一気に凍りますが、空気も不純物と考えると、それが抜けたお湯なら、なかなか凍りにくいかもしれません」
一方、京都大の小貫明教授は、効果が現れる可能性を指摘する。「お湯の場合、蒸発すると冷える潜熱があることと、水と空気の対流によって熱が運ばれたのかもしれません。即断はできませんが、何か理由があるのでは」
ムペンバ効果は、その意外さが関心を呼んだのか、番組翌日のヤフー検索ランキングで、21位にもランクされた。ユーチューブでも、NHKの番組内容通りだったことを伝える自主実験の動画がいくつか投稿されている。
ムペンバ効果らしきものが現れるのは事実らしいが、まだ十分に解明されたとは言えない物理現象だ。それが、結果として、論議を呼ぶことになったようだ。