みずほコーポレート銀行(CB)の斎藤宏頭取が、テレビ東京の女性記者との不倫現場を写真週刊誌に暴かれるという前代未聞のスキャンダルが発覚した。業界内では、「斎藤頭取は『刺された』」として、その背景について憶測が広がっている。具体的には、「合併前の旧3行による派閥争いの結果だ」という推測や「サブプライムローンでの損失への責任を問う声が行内で広がった結果だ」といった声だ。
合併前の旧3行による勢力争いが背景
旧3行の力関係は拮抗している
スキャンダルが暴露されたのは、写真週刊誌「フライデー」2008年8月1日号(首都圏では7月17日発売)。5ページにわたって掲載された記事によると、斎藤氏と女性記者は7月8日、東京・麻布十番のすし屋で会食。テレビ東京の女性記者は、写真では顔がわからないように加工されているが、記事によると「長澤まさみに似た涼やかな目元が印象的」なのだそうだ。記事には、会食後に路上でキスをする様子をとらえた写真が掲載されており、「不倫の決定的瞬間」を押さえられてしまった形だ。
みずほCBとしては今回の事態を静観したい構えのようだが、斎藤氏はテレビ東京の社外監査役も務めており、単なる不倫よりも「さらに不適切」との声も上がりかねない情勢だ。
そんな中、この前代未聞のスキャンダルが発覚した理由に注目が集まっている。
斎藤氏は頭取就任7年目。05年の楽天・TBSとの攻防で仲介役を果たすなどの豪腕としても知られ、業界では「平成の鞍馬天狗」との異名を持つ。それだけに斎藤氏のことを快く思っていない勢力も行内には少なくないといい、今回スキャンダルが発覚したのは、関係者が不倫関係をリークした、いわば「刺された」のではないか、との声もささやかれている。
経済ジャーナリストの阿部和義さんは、「合併前の旧3行による勢力争い」を理由に挙げる。斎藤氏は旧日本興業銀行出身だが、前田晃伸みずほフィナンシャルグループ(FG)社長は旧富士銀行出身で、杉山清次みずほ銀行頭取は旧第一勧業銀行出身。旧3行の拮抗した力関係を踏まえてバランスをとった形の人事だが、このバランスが崩れつつあったことが背景にあるのだという。
「旧3行は絶妙なバランスを保っていたが、それでも(斎藤氏の出身母体の)旧興銀の勢力の方が力があった。さらに、みずほはサブプライムローンで大損をしたが、この原因が斎藤氏。反興銀の動きもあって、退陣論も根強かった」
「記者としては軽率。自戒してもらいたい」
このように行内にも「『平成の鞍馬天狗』の鼻を折りたい」勢力が少なくなかったことから、「関係者のリークがスキャンダル発覚の原因」との見方を示している。斎藤氏の人柄については
「確か数年前にも、スキャンダルが取りざたされたことがある。私自身も彼のことはよく知っているし、いい男なんですが、昔から脇が甘いところがある」
と分析。半ば「刺されるべくして刺された」という面もありそうだ。ただし、一部で指摘されている「引責辞任説」には、きわめて否定的だ。
「女性スキャンダルで頭取が辞めるというのは前代未聞だし、影響が大きすぎる。こんなことで辞めていたら、きりがないですよ」
一方、女性記者への風当たりは、比較的弱いようだ。テレビ東京の島田昌幸社長は7月17日、報道陣に対して
「記者としては軽率。写真を撮られたことは自戒してもらいたい」
と苦言を呈する一方で、今後の処分については
「『私』の部分だから、会社として深入りすることじゃない。報道局員としての仕事をしてもらうつもりです」
とも発言。あくまで「私的な問題」として処理したい考えを明らかにしている。