「敷金・礼金・仲介手数料・リフォーム費用0円」をうたう不動産会社・スマイルサービスに、家賃を滞納すると無断で鍵を交換され、違約金を支払わされたとして、同社の物件に入居する男性らが同社を提訴する。同社は「係争中」を理由に取材に応じていないが、提訴する弁護士からは「貧困層の若者らを狙った悪質な貧困ビジネス」という指摘まで出ている。
「貧困層の若者等をターゲットにした悪質なビジネス」
HPでも「敷金・礼金ゼロ」をうたっているスマイルサービス社
東京・西新宿にある不動産会社スマイルサービスは「敷金・礼金・仲介手数料・リフォーム費用0円」をうたっているが、同社が家賃を滞納した際に無断で鍵を交換し、「生存確認出張料」などと称した違約金を支払わされたとして、同社の物件に入居する男性らから提訴されることが2008年7月16日に明らかになった。
「貧困層の若者等をターゲットにして、そういう人たちの困窮や無知につけ込んだ悪質な『貧困ビジネス』と思われる」
この日会見した被害者弁護団の宇都宮健児弁護士はスマイルサービスの契約行為についてこのように述べた。弁護団によれば、家賃を1日滞納しただけで無断で鍵を交換され、違約金を支払わなければ部屋に入れなくなるケースが相次いでいるという。同社の物件に入居する男性ら4~5人が原告となり、住居侵入・消費者契約法違反・器物損壊などを理由に、同社を相手取って訴訟を起こす準備を進めている。
弁護団などによれば、本来ならば借地借家法によって借主の保護が重視されている。同社は書面上で「施設付鍵利用契約」を借主と結び、それを理由に無断で鍵を交換するなどしているようだ。実際に、自分の家に帰って来たらいつの間にか鍵が交換され、荷物が部屋にあるのにネットカフェで過ごすことを余儀なくされたり、就寝中に突然部屋に侵入してきて違約金を請求されるなどのケースがあった。一日でも滞納すると「生存確認出張料」と称した1万500円に加え、違約金として家賃の10%を請求されるという。
違法であることは会社も知っている?
「契約を結んでいる人の多くは、把握している限りでは、若い人で収入が安定していない人、非正規雇用の人だ」
とJ-CASTニュースに話すのは被害者弁護団の戸舘圭之弁護士。戸舘弁護士によれば、スマイルサービスが家賃の支払いが数日遅れただけで、家賃の30%以上もの違約金を請求するのは消費者契約法違反にあたるという。
「こうした違約金が違法であることはむこう(スマイルサービス)も知っているので、違約金は請求すれば返還している。しかし、その違法性を認めておきながら、こうした契約を続けているのは悪質。実態は賃貸借なのだからこうした契約は脱法行為で、(住居侵入などは)犯罪行為に当たる」
J-CASTニュースではスマイルサービスに取材を申し込んだが、「係争中なのでコメントを差し控える」としている。また、どういう契約を結んでいるのか聞いてみても「係争中」を理由に説明を拒んでいる。戸舘弁護士は「本来なら行政が住宅サービスなどセーフティネットを整えるべきだが、それが整っていないために、こうした貧困層を狙うかたちのビジネスが今後増える可能性がある」と指摘している。