トヨタ自動車が、北米での本格的な生産体制の見直しに乗り出す。2010年後半に稼働する予定の米ミシシッピ工場は、需要が急減している大型車に代わり、燃費の良いハイブリッド車「プリウス」の生産に変更する。さらに、3工場で08年8月から3カ月間、生産ラインを一時休止し、大型車を大幅に減産することも決めた。トヨタが北米で長期間の生産休止を行うのは、同社が1980年代に米国に進出して以来、初めて。
プリウスを米国で生産するのは初めて
北米での生産体制を見直すトヨタ自動車の「プリウス」
ミシシッピ工場の当初計画では、大型のスポーツタイプ多目的車(SUV)「ハイランダー」を生産することになっていた。しかし、米国では低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題を機とした景気低迷は深刻化し、歴史的な原油高に伴うガソリン高騰によって消費者心理が冷え込み、燃費が悪い大型車の販売は落ち込みが激しい。このため、低燃費で人気が急増し、納車までに半年もかかる状況が続いているプリウスの生産に切り替える。トヨタがプリウスを米国で生産するのは初めてだ。
また、大型ピックアップトラック「タンドラ」の主力工場でもあるテキサス工場の生産を全面的に休止。インディアナ工場の生産ラインの一部も止める。両工場に大型車用のエンジンを供給しているアラバマ工場も休止する。3工場の従業員数千人は他工場に振り替えるなどの措置で対応するが、解雇はしない方針だ。
北米の自動車市場には暗雲が漂っている。6月の米新車販売台数は前年同月比18.3%減で、15年ぶりの低水準に落ち込んだ。米国の08年の 新車販売は1500万台を割り込む見通しで、07年の1614万台を大幅に下回りそうだ。最大手ゼネラル・モーターズ(GM)は、自動車の販売不振などで資金繰りの悪化が指摘され、経営危機のうわさも流れるほどだ。クライスラーもミズーリ州のミニバン工場を10月末で事実上閉鎖し、約2400人の削減を打ち出した。