2008年7月の洞爺湖サミットで地球規模の環境問題が議論されるなど、今まさに環境ブームだ。そんな中、お肌の「環境問題」にも意識が高まり、ナチュラルコスメへの関心が集まっている。
07年9月にオープンした東急ハンズ銀座店(東京都中央区)のナチュラルコスメ売り場が好調だ。それは化学物質を極力使わず、植物性由来の成分を用いた化粧品の総称で、有機農法で作られた植物を使用した「オーガニックコスメ」も含まれる。以前は、肌が敏感だったり、化学物質を嫌う一部の女性の間でしか知られていなかったが、ここ数年のロハス人気にも後押しされて、今では化粧品のカテゴリーの1つとして確立している。そのほとんどが環境先進国のドイツや、フランスといったヨーロッパから輸入されていて、日本では主に量販店やドラッグストアで扱っている。
同店は銀座という土地柄、お客の大半が女性だ。そのためハンズ他店よりも品揃えが豊富で、ヨーロッパの17ブランドを扱っている。中でも人気なのは、ドイツの「Dr.ハウシュカ」、スイスの「ヴェレダ」、そして日本初上陸したフランスの「クルールキャラメル」だ。開店当初から30歳以上の女性を中心に安定して売れていて、化粧品売り上げの4分の1を占めている。ナチュラルコスメが一部の層だけでなく、広く受け入れられるようになったと言えそうだ。
化粧品にも「安心・安全」求める声
ロハス人気もあり、コスメもナチュラル志向に
その理由について売り場の主任を務める内山雅章氏は、こんな見方をしている。
「中国ギョーザ事件や賞味期限切れ問題が相次ぎ、本来もっとも安全でなければならない食品でさえ、もはや安全とは言い切れなくなっている。肌に直接つける化粧品に対しても、安心・安全を求めるように変わってきた」
確かに、化粧品にも安全性を求める声は年々増えている。ファッション誌でもナチュラルコスメの特集が組まれたり、「食べられる」コスメといった切り口でも取り上げられている。中でも口紅は、ほとんどの女性が食事などでいつの間にか取れてしまったという経験をしていて、体に与える影響が気になるところだ。業界関係者によると、女性は一生のうちに自分の体重分ほどの口紅を体内に入れているといったデータもあるそうだ。また、肌への浸透率が高いと言われて数年前にブームとなった、成分をナノ化した化粧品についても、安全性を疑問視する声が上がっている。07年10月に設立された日本オーガニックコスメ協会の担当者は、
「およそ60年前から、石油由来の保湿成分、界面活性剤、保存料が多用されている。乾燥、くすみ、シミといったトラブルを引き起こすほか、肌バリアが壊れて敏感肌になることもある」
と警笛をならす。日常的に使用している化粧品は「スキンフーズ(肌への食べ物)」とも言われ、気を使う女性が増えているようだ。