若者の車離れが話題になり、販売台数も低迷する中で、その影響が自動車雑誌業界にも及んできた。最大手の三栄書房とニューズ出版の合併が決まるなど、業界は対策を模索している。10年前に比べると、クルマ雑誌の売り上げは半減した、という話もあり、再編の動きがこれから加速する、という見方も有力だ。
業界トップと第三位が合併
創業60年以上の歴史がある業界最大手の三栄書房(東京都新宿区)は第三位のニューズ出版(品川区)と2009年1月1日付けで合併する、と08年7月2日に発表した。合併後の新名称は三栄書房となる。両社は01年から協力体制を敷き、モータースポーツ専門誌を手がける編集プロダクションや、共同持ち株会社を設立していた。
三栄書房はオートレースやチューニングといった分野で定評があり、500~600円の価格帯で大量に販売するというビジネスモデルを展開している。売れ筋はスクープから新車の評価まで載せた「ニューモデル・マガジンエックス」や、新車発表直後に出している「ニューモデル速報」だ。一方、ニューズ出版はコアな車ファンに向けた1000円~2000円台のチューニング誌を得意としている。スポーツカーのチューニング誌「ハイパーレブ」やワゴン車のドレスアップを特集する「スタイルRV」などだ。ターゲットとする層はかぶらず、合併によってシェアを広げられる、と期待している。
合併の背景には、新車の販売台数が低迷し、車雑誌の売り上げが落ちていることが挙げられる。お得意様である若者層が「車離れ」しているのも痛い。三栄書房の担当者は「業界全体で10年前に比べて売り上げが半減した」と厳しい現状を指摘する。
販売部数だけでなく、広告面も厳しい。以前は新車広告の多くが車専門誌に掲載されていたが、最近ではファッション雑誌やウェブサイトに分散しているという。新会社では扱う車雑誌のジャンルを細分化し、広告増につなげていく考えだ。また、毎年25万人を動員するイベント「東京オートサロン」にも力を入れたり、DVD付き月刊誌を増やすなど、出版周辺の事業で拡大を狙っている。
「CARトップ」は「部数減っているが、それほど悪くない」
三栄書房とニューズ出版の合併に対し、業界2位といわれる交通タイムス社(東京都千代田区)は、「読者層が異なる2社が合併したところで、売り上げが単純に倍増するとは思えない」と見る。同社の主力車雑誌「CARトップ」の販売部数は5年前と比べて減っているが、雑誌全体の落ち込みに比べたら「状況はいい」という。とはいえ、新車の販売台数が減っており、中期的な対策を模索中だ。
一方、ネコ・パブリッシング(東京都目黒区)は、バイク雑誌専門のバイクブロス(千代田区)と07年11月にネコ・ブロスモーターサイクルを設立した。バイク関連誌の編集、営業を新会社に完全に移行させる。さらに、広告営業、ウェブサイトについても一本化する予定だ。ネコ・パブリッシングは得意な外車情報に力を入れる。
新車の販売台数の低迷は、この数年で顕著になっている。日本自動車販売協会連合会(自販連)によると、普通車の07年の販売数は前年比7.6%減の343万3829台と4年連続で減少し、1972年以来35年ぶりの低水準だった。自販連が08年6月2日に発表した5月の新車販売台数は、前年同月比6.1%減の22万1377台。ガソリン価格の高騰や若者の車離れが原因だと見られている。