「ケータイ1人1台時代」が進むなか、携帯電話市場の飽和を指摘する声も出ている。ところが、若年層を中心に2台目のケータイ、「セカンドケータイ」を持っている人がじわじわ増えつつあるのだという。特に、発売されたばかりの「iPhone(アイフォーン)」は、3割がセカンドケータイとして購入されるという調査結果も出ている。ケータイは1台あれば十分な気もするが、いったいどのような使われ方をされているのだろうか。
彼女としゃべっていたら、料金が2万円を超えてしまって…
iPhoneは「セカンド携帯」としての利用も多そうだ
総務省が08年4月に発表した07年の「通信利用動向調査」によると、携帯電話の個人ベースでの利用率は73.9%。ところが、世代別に見ていくと、20~29歳が96.7%、30~39歳が94.3%、40~49歳が93.7%で、ほぼ「1人に1台」が実現しているとも言え、市場は飽和しているかのように見える。
そんな中、08年7月11日に発売されたばかりの米アップル社の携帯端末「iPhone(アイフォーン)」の発売をめぐってセカンドケータイの利用が注目されつつある。
ネットリサーチの「ネットエイジア」(東京都港区)が08年7月10日発表したiPhoneについての調査結果によると、購入予定者のうち30.8%がセカンドケータイとして購入する、と回答したのだ。購入予定者にiPhoneの何を魅力に感じているかを複数回答で聞いたところ、最も多かったのが「音楽プレーヤー機能」(92.3%)で、「デザイン」「タッチパネル」などが続いた。
もっとも、iPhone発売以前にも、セカンドケータイの利用は、じわじわと広がりつつあるようなのだ。PHS事業を展開するウィルコムが05年に音声定額制度を始めたほか、ソフトバンクモバイルが07年1月、月額基本料980円を支払えば、ソフトバンクどうしの通話が午前1時から21時まで無料になる「ホワイトプラン」を導入。これがセカンドケータイの普及に拍車をかけた模様だ。
「ファーストケータイ」としてドコモの端末を使っているという都内の男子大学生(19)は、07年12月に、ソフトバンクモバイルの端末をセカンドケータイとして購入した。その理由をこう明かす。
「コストパフォーマンスが一番の理由ですね。ドコモの端末で彼女としゃべっていたら、料金が2万円を超えてしまって…。『これではやっていけない』ということで、ホワイトプランが使えるソフトバンクの端末を買いました」
このように、MNP(番号持ち運び制度)の利用に踏み切るには及ばなくても、「恋人どうしのホットライン」としてセカンドケータイが活用されているケースが少なからずありそうだ。
相手によって連絡先を使い分ける
「ケータイ世界の子どもたち」(講談社現代新書)などの著書がある、千葉大学教育学部の藤川大祐准教授も、
「恋人同士で使うために、ウィルコムやソフトバンクを契約した、という例はちらほら耳にします」
と話す。
藤川さんは、音声通話ができる端末を3台、データ通信端末を1台所有する「ケータイヘビーユーザー」でもある。「ホットライン」とは違う理由で、「セカンド」「サード」ケータイの導入に踏み切っている。
「一般的には、複数台をもつ理由としては『相手によって(番号やメールアドレスなどの)連絡先を使い分ける』ということがあるのでは」
としながらも、機能面から複数台を使い分けることのメリットを強調する。
「GPSやワンセグ、おサイフケータイ、フルキーボードなど、1台の端末ですべての機能を満たしている訳ではありませんし、キャリアについても、通信速度やサービスエリアの広さ、定額料金制度の有無など一長一短があります。そこで、トータルのコストをおさえつつ、複数キャリア・複数端末を契約しています」
なお、藤川さん自身も「セカンドケータイ」としてiPhoneを手に入れたばかりだといい、
「iPhoneの『ケータイで音楽が聴ける』という点は珍しくも何ともないのですが、何と言っても、操作性の良さが魅力。いじっているだけでも楽しそう」
と期待感を示している。