他殺体で見つかった宮城県在住の17歳少女にあった入れ墨のタトゥーは、「素人が彫ったもの」との見方が出ている。18歳未満への入れ墨は、条例で禁止されてもいた。若い女性のタトゥーブームで、事情をよく知らずに入れる場合もあるようだ。
携帯プロフに自らのタトゥー写真を貼り付け
よほど気に入っていたらしい。岩手県内で2008年7月1日、他殺体で見つかった宮城県栗原市の無職佐藤梢さん(17)は、携帯電話のプロフィールサイトに、自らのタトゥー写真を貼り付けていた。
背中の肩から腰にかけて、バラの花2輪の間をチョウが舞う。
「ゃっと完成 予想外のできに驚き てか感激 また彫ってもらう 今度ゎ腕がいいかな」
プロフの日記には、こう綴られていた。その後に彫ったのか、佐藤さんの遺体の右腕には、クモが彫られているのが見つかっている。
今回の事件では、警察が岩手県内の彫り師らを当たっていたと報じられている。しかし、タトゥーが佐藤さんを特定する手がかりになったかと言えば、必ずしもそうではないようだ。
仙台市内で「スタジオ昌芳」を経営する彫り師歴30年以上の蛭田幸雄さんは、こう言う。
「あれは、素人が彫ったものですよ。プロであれば、だれが彫ったか分かります。宮城では、プロショップが5、6店ありますが、素人はたくさんいます。駅前などで、素人がよく若い女の子を相手に彫っています。だから、だれが彫ったかはなかなか分からないでしょうね」
さらに、18歳未満に入れ墨を入れることは、宮城県では、青少年健全育成条例で禁止されている。「17歳に入れるなんてスタジオを閉鎖するようなものですから、プロは彫りません」と蛭田さん。佐藤さんが他県で彫った可能性はあるが、もし地元で彫ったのなら、素人が違法で行ったということになるようだ。
「アクセサリーを買う感覚で彫りに来る」
タトゥーは、歌手では、浜崎あゆみさんが右肩に一時ユニコーンの絵を入れていたり、安室奈美恵さんが左腕に息子の名前を彫っていたりしている。そんな影響から、若い女性に人気がある。「コンビニなどに、タトゥーを特集するファッション雑誌は、たくさん置いてあります。だから、宮城だって東京と同じですよ」と蛭田さんは言う。
スタジオ昌芳では、20~30代を中心に女性が客の約7割を占めるという。「当初は、芸能人の影響もあったようですが、最近は、友人がやっているからと、アクセサリーを買う感覚で彫りに来るようです。若い女性がタトゥーをしているアメリカと同じような感覚に近づいていますね」
タトゥーを彫るのも、手軽にできるようになったとも言う。「ネットや雑誌の通販で、安いキットを買えます。そして、雑誌などを見て、絵をこんな感じにとパッと彫ることができます」。佐藤さんのタトゥーも、「通販キットで彫ったレベル。プロなら最低10万円はするものの、素人なら4、5万円で彫れる」という。「だから、小遣い稼ぎでやる人が増えるんです」
もっとも、18歳未満は違法になる場合があるが、このような現状で、なかなか目が行き届かないらしい。
大変なのが、タトゥーを消すことだ。蛭田さんによると、消すのは痛く、1年かかることもあるという。あざが残る可能性もある。蛭田さんは、こう嘆く。
「先のことを考えないで彫る若い人が増えています。消すことの大変さを考える人は、そんなに安易には彫りませんよ」