テレビ局が役員報酬カットばかりか、番組の制作費まで削ろうとしている。広告収入の大幅な落ち込みを受けたものだ。そして、コスト面で有利なバラエティ、通販番組が増えつつあり、ネット媒体にすり寄る動きすら見せている。
「過去10年間で最低レベルの落ち込み」
役員報酬カットを行ったテレビ朝日
「構造的な問題がある」
テレビ朝日の君和田正夫社長は、2008年7月1日の定例会見で、広告不振の深刻さをこう嘆いた。
新聞各紙によると、番組の間に流す同社スポットCMの収入が、5月は前年同月に比べ、15%ほども減った。君和田社長が「過去10年間で最低レベルの落ち込み」と漏らしたほどだ。この不振を打開するため、同社は6月10日から業績対策緊急本部を設置。そこで検討した結果、全役員29人を7月から9か月間、平均12%の報酬カットを行うことにした。
また、テレビ東京も7月1日、広告不振で役員報酬を同月から5~15%カットすることを明らかにした。それに加え、経費削減のため、08年度の番組制作費を約19億円も減額するというのだ。
苦しいのは2社だけではない。民放キー局5社の08年3月期連結決算では、本業のもうけを示す営業利益は全社が減益になった。
広告不振の理由として、各紙では、原油高インフレによる消費低迷で企業が広告費を抑えていることや、ネット媒体への広告掲載が増えていることを挙げている。さらに、テレビ界の事情に詳しい芸能評論家の肥留間正明さんが指摘するのが、テレビ番組の視聴率低下だ。
「視聴率ベスト30の中に、20%を超えるものは5本ぐらいしかないようになっています。数字が取れないので、スポンサーがなかなかつかないんですよ」
原因として、肥留間さんは、テレビがつまらなくなったことを挙げる。
「チャンネルをひねっても、マンガ原作のドラマしかない。バラエティ、ジャニーズ系の番組も、見る前から予想がつきます。制作会社任せで、テレビ局の勉強不足なんです。映画会社がダメになった状況とよく似ています」