2011年7月24日に地上アナログテレビ放送が終了し、地上デジタル放送に移行するため、生活保護世帯に地デジ対応の専用チューナー(約5000円相当)を現物給付するほか、必要があれば屋外アンテナの改修(約3万5000円)などを無償で行うべきだ――。総務省の情報通信審議会は2008年6月23日、こんな内容の答申をまとめた。
06年度末の生活保護世帯は約107万世帯。生活保護世帯に、果たして税金で地デジチューナーを支給する必要があるのか。09年度予算の概算要求を控え、議論を呼ぶのは必至だ。
2000億円でも足りない可能性も
増田寛也総務相は地上デジタル放送(地デジ)への移行に合わせ、今回の専用チューナー支給のほか、難視聴対策などに総額約2000億円の総合対策を09年度以降、約3カ年で行うと既に発表している。総務省内では「地デジ対応で、全国ですべきことは山ほどある。とりあえず増田大臣は2000億円と発言したが、それでは足りないかもしれない」と漏らす。09年度予算の概算要求に向け、総務省のバラマキ体質が露呈する可能性が高まっている。
地デジ移行後は、専用チューナーがなければ現在のアナログテレビでは番組を見られない。アンテナの改修が必要な家庭もある。
地デジの専用チューナーの生活保護世帯への現物支給について、総務省は「災害情報などテレビの情報伝達機能を維持するため」などと説明。英国、フランスなどでも地デジ移行に伴い、低所得者ら経済弱者への支援が行われるため、日本でも同様の支援が必要と判断した。しかし、現実には専用チューナーの現物支給など、世界のどこにも先例はないらしい。
総務省、バラマキ体質といわれかねない
審議会では専用チューナーの現物支給だけでなく、電器店で現物と引き換えるクーポンや、購入資金の全額支給などが検討された。その結果、「現金の支給は生活費に使われてしまう可能性が高く、クーポンは偽造の可能性がある」などと退けられ、現物支給に軍配が上がったという。笑い話のような議論だが、総務省としては大まじめで、09年度予算の満額獲得を目指している。果たしてうまくいくのか。財務省との予算折衝が今から注目される。
総務省の有識者研究会は2008年6月20日、ブロードバンド(高速大容量)のインターネットを全国どこでも利用できるようにするには、離島や山間地などへの施設整備に910億~2180億円必要だとの最終報告書案をまとめた。
ところが、08年3月末のブロードバンドの世帯カバー率は全国で98.3%に達している。残りのわずか1.7%の約86万世帯が離島や山間地などブロードバンドのない地域に暮らしているというが、果たして、そんな離島や山間地にまで税金で光ファイバーや通信衛星を利用したブロードバンドを敷設する必要があるのだろうか。これも「バラマキ」といわれかねない措置だ。