「おぞましい『デジタルポピュリズムの勝利』」と批判
その結果、5月初旬には1万人規模だった「ろうそく集会」(ろうそくには「抗議」の意味がある)は、6月10日にはソウルだけで80万人の規模(主催者発表、警察発表では8万人)に膨れあがった。なお、この日には、混乱の責任を取って全閣僚が辞意を表明している。
それでも騒動は収まらず、批判の矛先は「ろうそく集会」を批判する「朝・中・東(朝鮮日報・中央日報・東亜日報)」と呼ばれる保守系の大手新聞社にも向けられた。各社の広告主のリストがネット上に公開され、抗議の電話をかけるように呼びかける声が相次いだのだ。各紙はその煽りを受けてページ数を減らさざるを得なくなっているほか、6月末には、デモ隊が各社の社屋を実際に襲撃するという事態に発展してもいる。その一方で、集会を支持する左派系新聞やネット系新聞は、「朝・中・東」に批判的なこともあって、通常通り広告が掲載されているという。
この「朝・中・東広告主不買運動」が展開されている舞台も、前出のポータルサイト「DAUM」だ。政府の放送通信審議委員会は、この運動を「違法」だという判定を下し、DAUMに対して、関連した書き込みを削除するように求める文書を送った。DAUM側は削除に応じる見通しだ。
一連の騒動で、韓国ではネットと政治活動が不可分であることが改めて浮き彫りになった形だが、著名な小説家、李文烈(イ・ムンヨル)氏は、これを「おぞましい『デジタルポピュリズムの勝利』」と批判。この発言をめぐって、ネット上ではさらに議論が沸騰している。政府はネット実名制の強化を発表するなど、ネット規制を進める動きも加速しており、今後、これらの運動が岐路に立たされる可能性も出てきそうだ。