銀行の住宅ローン金利が上がっている。三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行など大手銀行は2008年7月1日以降に新規で適用する住宅ローンの金利を引き上げた。これで3か月連続の引き上げとなり、12年ぶりの高金利水準となった。長期金利が上がったためだが、このまま上昇すると消費者の返済負担も増えて、マンションや一戸建ての売れ行きにも響きそうだ。
住宅ローン借りられる金額が少なくなる?
十年ぶりの高金利で住宅ローンの負担が増す(写真はイメージ)
三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行は、7月1日から新規で適用する住宅ローンの金利を引き上げた。三菱東京UFJ銀行は、期間3年もの固定金利型住宅ローンで年3.75%、5年固定型で年3.95%%、また10年固定型では年4.25%になった。引き上げ幅はいずれも0.2%。みずほ銀行は3年固定型で0.1%引き上げて年3.65%に、5年固定型では0.05%引き上げ年3.75%に、10年固定型は0.05%引き上げて年4.0%とした。いずれも、短期プライムレートに連動する変動金利型住宅ローンについては年2.875%で据え置いた。
銀行の住宅ローンを決める際の目安となるのが長期プライムレート。その指標である新発10年国債利回りは08年3月には1.2%台まで低下したが、4月以降は急反転。それを受けて、みずほコーポレート銀行や新生銀行などは長プラを、5月に2.4%、6月には2.45%と2か月連続で引き上げていた。
住宅ローン金利の上昇も、こうした長期金利の上昇を背景にジワジワ上昇。10年固定型では「5%」がみえてきた。じつに1996年8月以来、12年ぶりの高水準になる。
金利が上昇すると利払い負担が増すので、新規で住宅ローンを借りようとすれば、借りられる金額が少なくなる。たとえば、5000万円のマンションを買いたいと思っていた人が、4000万円の物件でガマンしなければならなくなる。これまでマンション価格は高止まりしてきた。それもあって様子見を決め込んでいた消費者にとって、ようやく物件価格が下がりはじめたというのに、今度は住宅ローン金利が上昇して希望する物件が買えなくなる可能性が出てきたわけだ。
5年での固定金利型などは急に負担増
住宅ローン金利引き上げの影響について、みずほ銀行は「低金利が長く続いたことで固定金利型の利用が伸びているが、金利が低い変動型の人気は根強い」と、金利が据え置かれた変動金利型に流れると予測している。
変動金利型は年2回適用金利を見直し、金利上昇(下降)を自動的に反映できるので、銀行にとってもリスクの小さい、メリットのある商品。長期固定型の金利が先行して上がることで、おのずと変動金利型に利用者の目が向くというわけだ。
金利の引き上げで負担が増すのが現在、3年とか5年での固定金利型を利用している人。たとえば、5年前に年2%の金利で固定型住宅ローンを借りていた人が、7月に期限を迎えた場合、同じ期間5年で継続して借りると金利は約年4%になる。もちろん、元利金の残高と返済期間によって返済負担は変わるが、単純に金利負担は2倍に。金利の見直しを繰り返して、ジワジワ上がる変動金利型とちがって、負担が一気に増えることになる。
利用者のこうした負担増に、みずほ銀行は「利用者の生活が急に苦しくなることがないように、激変緩和措置をとっている」と説明する。たとえば、みずほ銀行では金利優遇キャンペーン中に固定金利型住宅ローンを借りた場合、当初の期間が到来しても継続して借りる場合は急に適用金利が上がらないように2年固定型で1%、5年固定型で0.8%、10年固定型で0.4%の金利を店頭表示金利から優遇する制度を用意している。三菱東京UFJ銀行などでも同じような手当てをしている。
メガバンクは、キャンペーン金利など優遇制度を適用すれば、「少なくとも金利の上昇分は吸収できる」と口を揃え、またある関係者は「住宅ローンは競争が激しくなっていて、金利優遇キャンペーンをはじめ、絶えず需要を掘り起こしている。とにかく獲得が先決だ」と、まだ借り手優位を強調する。