「ながら音楽」は危険がいっぱい 交通事故、ひったくりにわいせつ事件…

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   「iPod」などのMP3プレイヤーが普及し、音楽を聴きながら歩いたり、自転車に乗ったりする若者が増えている。音楽に気を取られて事故に逢うだけでなく、背後から人が近づいてくるのに気がつかず、ひったくりやわいせつ事件の被害者になる危険もある。

遮音性の高いイヤホンでは危険性が高い

   イヤホンやヘッドホンで音楽を聴いている女性を狙い、現金を奪う事件がさいたま市緑区のJR東浦和駅周辺で2008年5月に起きた。また6月22日のYOMIURI ONLINEによると、3月には北埼玉郡で、4月にはさいたま市大宮区で、イヤホンで音楽を聴いていた女子高校生が後ろから来た男に突然スカート内に手を入れられる強制わいせつ事件も起こっている。いずれも音楽を聴きながら歩いていた女性を狙ったと推測される。

   埼玉県警は

「外の音が聞こえにくいだけでなく、注意散漫になって危ない」

と話し、音楽を聴きながらの歩行は危険だと強調した。

   事件のほかに、「ながら事故」が駅や踏切で起こっている。J-CASTニュースが調べたところ、東京都中野区のJR東中野駅で、イヤホンをしていた早稲田大学院生が電車に接触して死亡した事故が07年12月に発生した。また、07年1月には大分市のJR牧駅と高城駅間の踏切で男子高校生が跳ねられた事故も起こった。こちらもイヤホンをして警報機の音が聞こえなかったという。

   東京都では、イヤホンを使用して屋外で音楽を聴いた場合の危険性について、使用者662人を対象とした調査を行った。08年3月に発表した調査結果によると、53人が「自動車や自転車と接触しそうになった」と答えている。中には「救急車に気づかなかった」という回答者もいる。

   またイヤホンを使って70デシベル程度で音楽を聴いた場合、通常よりも周囲の音が30デシベル以上も聞こえなくなった。東京都生活文化スポーツ局消費生活部生活安全課の担当者によると、挿入型など遮音性の高いイヤホンでは聴覚感度は最大65デシベルも低下するという。これでは自転車のベル音に気づきにくく、大きな音量を出していると自動車のクラクションも聞こえないかもしれない。東京都の「くらしの安全情報サイト」では、イヤホンを使用するとどのくらい周囲の音が聞こえにくくなるか、サンプル音を聞くことができる。

イヤホンやヘッドホンもめざましく進化

   しかし、こうした危険性について認識は薄い。「Yahoo!知恵袋」に07年12月に寄せられた「イヤホンで音楽を聞きながら自転車を運転したら危険ですか?」という質問に対して、「問題ありません」という意見が見られる。一方、「危ない」という回答のなかには、こんな例も書かれている。

「自転車の方がイヤホンで音楽を聞きながら視覚でも周囲を全く確認せずにいきなり道を横切って車に轢かれた事故がありましたよ」

   ところで、「iPod」などのMP3プレイヤーが普及し、イヤホンやヘッドホンもめざましく進化している。最近では周囲の音を遮断する「ノイズキャンセリング」機能付きのタイプが各オーディオメーカーから発売され、騒音の中でもクリアな音楽が聴けるようになった。

   ソニーは、ノイズキャンセリングヘッドホンの新製品を08年7月に発売する。「人が耳障りに感じやすい40~1500ヘルツの音を低減させるもので、周囲からの騒音がまったく聞こえなくなるわけではない」と説明している。

   広報担当者は、「自転車や自動車を運転しながらの使用や、踏切、駅のホーム、工事現場といった周囲の音が聞こえないと危険な場所では使用しないようにという警告を、イラスト付きで目立つように説明書に記載している」という。しかし、守っていない人が多いことに対しては、「メーカーとしてできることはしている」との回答に止まった。

   また、国内の主要オーディオメーカーが所属する業界団体「電子情報技術産業協会 (JEITA)」では事件や事故が発生していることを重く受け止めていて、「行政とも連携して対策を考えていきたい」と話している。一方で、「高級イヤホン」と呼ばれるより高性能なタイプが海外の大手オーディオメーカーから発売されている。海外メーカーはJEITAに所属しておらず、業界団体だけではルール作りが難しいという問題も浮かんでいる。

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