海外ホテルの宿泊費が値上がりしている。ただ、会社から支給される宿泊費は据え置きで、サラリーマンは海外出張のたびに自腹を切らざるをえない、という「痛い事態」になっている。
シンガポールではホテル代も年々上昇中?
富山県の石井隆一知事らが2005年11月に中国を訪れた際、1泊5万円のホテルに宿泊した。ところが、県内の市民団体がその一部を返還するよう求めた訴訟を起こし、1泊2万円を超えた分については返還するよう命じる判決が出たという。2008年6月18日に各紙が報じた。
富山県人事課によると、同県では、国家公務員の旅費を定めた「国家公務員等の旅費に関する法律」にもとづいた値段を定めていて、知事の場合の中国での宿泊費は1万7400円と定められている。5万円は「高すぎる」という見方が多いが、本当に1万7400円で大丈夫なのか。
「5万円のホテルは今やそう珍しくない。ユーロを筆頭に外貨が値上がりしているなか、海外ホテルの宿泊費も軒並み上がっている」
海外出張が多いという会社員男性はこう言い切る。
男性によると、特に西ヨーロッパとシンガポールでの値上がりがすごい。数年前の2倍以上だ。つい最近、イギリス・ロンドンで泊まったホテルは、日本で言えば安ビジネスホテルといったところで、バスタブもなくシャワーだけ。しかも、狭くて日当たりも悪いのに、1泊4万円近くだった。
1泊1万円以下でも泊まれる東京のビジネスホテルと比べると、3倍以上という値段だ。これでは支給される2万円弱という一日あたりの宿泊費を大幅に超え、持ち出しになる。さらにレストランも値上がりしていて、食事1品とワインを少し飲むと1食あたり5000円くらいになるそうだ。宿泊代以外に少々「日当」をもらっても、とてもカバーできない。
ビジネスマンと思われる人物のブログ「地方ではたらく輸入会社社長のブログ」では、
「ここ数年でアジアのある都市で私が定宿としているホテルのコーポレートレートが55USドル (5年前)から120USドルにまで跳ね上がっております」
「経済好調なシンガポールではホテル代も年々上昇中だ。おまけに空室率も年々下落」(なでしこ論。)
といった意見が書き込まれている。
ロンドンは3~5万円台が多く、8万円以上も
海外出張の宿泊費は、民間企業でも、公務員の「旅費法」を参考にしていることが多く1泊2万円以下が相場のようだ。財務省支給局の担当者によると、旅費法で定められている宿泊費は1984年から変わっていない。「高くすると国民から不満がでる」というが、職員の間でもこの基準が古く、場所によっては旅費が足りないという声も上がっている。
一方、JTBグループの出張専門旅行会社、JTBビジネストラベルソリューションズが展開する海外ホテルの予約サイト「MyBTS」で主要都市のホテルを検索してみると、中国上海は2~3万円台、シンガポールも2万円前半~3万円台が多い。仏パリは3~5万円台、英ロンドンも3~5万円台が多く、8万円以上のものもある。とても規定内ではとまれない実態が垣間見える。
民間会社の場合、支給される宿泊費を超えても「明らかな理由」がない限りは自腹で支払うという。しかし明らかな理由の定義が明確でなく、「普通は出してもらえない」そうだ。