500円でも将来は減る可能性
なぜ今、こんな1000円構想がでてきたのかについて、
「政治的な思惑による国民に対する目くらまし、だと感ぜざるを得ない」
と依田教授は話す。消費税アップ問題の政治的やりとりや、後期高齢者医療制度の失敗などを、ありもしない「4兆円の税収」に摩り替えているだけなのではないか、と痛烈に批判をしている。
一方で、1箱500円にした場合は、0.6兆円から1.5兆円の税収増が見込めるのだそうだ。禁煙を考える人の割合が40%にとどまるという分析からだ。ただし、これは一時的な数字。500円になった場合、ただでさえ喫煙率の低い若い層のたばこ離れが進み、高齢者も健康上の都合などもあり禁煙者が増えるため、結果的に税収額は下がっていくからだ、としている。
経済アナリストの森永さんも「逆に税収が減ってしまうことさえ、十分ありえることなのだ」と08年6月26日付けの朝日新聞のコラムで発言している。
過去2回(03年と05年)たばこの増税があったが、消費量が減ったため増収にならなかったと指摘。製薬会社ファイザーの08年4月の調査で、「1000円になったら禁煙する」と答えた79%全員が禁煙した場合、税収は現状と変わらないと計算した。さらに、たばこ産業の生産額の減少で経済損失が生まれ、禁煙によって元喫煙者の寿命が長くなれば、国内の医療費や年金給付が増加する、という「マイナス効果」も指摘している。
税収が減るというシナリオが荒唐無稽とは到底いえないのは確かだ。