モデルチェンジに合わせ 自動車価格実質的に値上げ

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   鋼材や原油価格の高騰にみまわれる自動車メーカーに、じわじわと値上げの動きが見え始めた。既存車両の価格を上げるのではないが、モデルチェンジに合わせた性能向上などと込みこみで、従来車より高い価格を設定しているのだ。少子高齢化などで自動車保有がマイナスに転じる中、露骨な値上げは車離れに拍車を掛けかねず、かといって、「原材料高は限界にきている」(自動車メーカー)。自動車メーカーの苦肉の策を、消費者はどう受け止めるのだろうか。

「アルファード」「ティアナ」など値上げ

   トヨタ自動車は、ミニバン「アルファード」に旅客機のファーストクラスと同レベルの座席を取りつけるなどして高級感を打ち出し、価格を従来より約20万円高くした。日産自動車もセダン「ティアナ」の全面改良に伴い、乗り心地などを向上させることで、旧来のものより最大約40万円高く設定。ホンダも小型ミニバン「フリード」の性能を高めて、旧モデルに相当する「モビリオ」より約20万円引き上げた。

   「実質的な値上げ」ともとれる新モデル車の価格引き上げ。その背景にあるのは、「コスト削減だけではもう吸収しきれない」(自動車大手)という深刻な原材料高がある。

   鉄鋼大手との今年度の鋼材価格交渉で、トヨタなど自動車各社は、2007年度比35%高の1トン当たり約3万円の値上げで合意したとされる。取引価格は同10万円を史上初めて突破することになる。日産のカルロス・ゴーン社長は2008年5月、報道各社とのインタビューで、「どこかの時点で消費者に転嫁せざるを得なくなる」と述べたように、各社は、価格転嫁ができなければ、経営への影響が避けられない事態に直面している。しかし、簡単に値上げに踏み切れる環境にもない。

消費者の車離れがさらに強まることが心配

   国土交通省などの調査では、07年度末の自動車保有台数(軽自動車や二輪車含む)は前年度末比0.2%減の7908万762台で、統計を取り始めた1946年度以来、初めて減少に転じた。高度成長期には2ケタ増の年もあるなど、戦後の経済成長とともに一貫して増加の道をたどってきた自動車保有台数。しかし、ここ数年は伸び悩みが顕著だった。人口減により国内市場は縮小しているうえ、携帯電話やパソコンの普及により若者が以前ほど車に関心をもたなくなっているのが要因だ。

   こうしたなか、自動車メーカーが強引に車の値上げに踏み切れば、消費者の車離れはさらに強まる可能性は少なくない。このため、各社は車の高級化などとセットで従来からの価格体系を見直し、割安感を高める工夫をせざるを得ない。各社は「単なる値上げではなく、十分にお買い得感はある」と胸をはってみせるが、その心境と将来の展望は複雑だ。

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