肉で、「もの忘れ」を防げる?
脂身つきの豚肉も、アラキドン酸を摂れる食品のひとつ(写真はアボカドソースを添えた豚のソテー)。
古賀教授は「萎縮は加齢とともに進んでしまうため、脳の『構造』と『機能』を支えるものを、積極的に摂る必要があります」とも指摘している。さまざまな栄養のなかでも、古賀教授が「その筆頭」としてあげるのが、必須脂肪酸の「アラキドン酸(ARA)」だ。
脳の細胞膜を構成するアラキドン酸は、脳のエイジングケア(老化予防)への関心が高まるにつれて、注目されてきた脳の栄養成分。人が生きていくうえで欠かせない必須脂肪酸のひとつで、記憶力や集中力に効果があるとされている。
このアラキドン酸の摂取で国際的に有用性が認められているのが、赤ちゃん。
なんと、母乳にはアラキドン酸が含まれているというのだ。米国の臨床栄養学の専門家スーザン・カールソン博士など多くの研究でも、アラキドン酸を摂取することによって赤ちゃんの精神面での成長、学習、記憶能力の向上が期待できることが判明。昨年には国連の合同食品規格委員会の総会でも、ベビーミルクにDHAと同量以上のアラキドン酸の配合を推奨することが合意され、国際的にもその有用性が認められている。
医学的にも、「カラダによい脂」であるアラキドン酸をしっかり摂ることで、脳の機能改善が証明されてきている。
サントリー(株)健康科学研究所と杏林大学医学部では、60歳~70歳の男性20名に、1日240mgのアラキドン酸を1か月間摂取してもらい、その前後で脳の認知機能を比較する…という共同研究を行った。その結果、脳波は「情報処理のスピード」と「集中力」に向上を見せ、その変化は年齢に換算して5~8歳の若返りに相当したという(2003年 第57回日本栄養・食糧学会)。
ただ、アラキドン酸は体内でつくられる量が限られていて、毎日の食生活で摂取していくしかない。
主な食品として、豚レバーや牛レバー、たまご、鶏もも(皮つき)、豚もも(脂身つき)などに含まれている。
脳のためには「肉」も必要というわけだが、これらはコレステロールが比較的高い食品でもある。高齢者や健康に気をつかっている人などは、バランスを考えて摂取することが大切だろう。