インターネット上の掲示板で爆破予告や殺害予告をして逮捕されるケースが相次いでいる。警察もプロバイダーなどに「通報要請」をしており、「犯罪予告をすれば捕まる」というのが半ば常識にもなりつつある。それでも、東京・秋葉原での殺傷事件以後も同様の書き込みで逮捕される「模倣犯」は後を絶たない。専門家からは、「『書けば捕まる』のは頭では分かっていても、いざ捕まってみないと実感がわかないのでは」との声も聞こえてくる。
特に中高生などの若年層が目立つ
「予告.in」では、連日検挙者が出ていることがわかる
08年6月8日に秋葉原で17人が殺傷された事件では、加藤智大容疑者(25)がケータイ向け掲示板に「犯行予告」を行っていたことが注目を集めた。それ以前も、掲示板上で「女子生徒を殺害する」「建物を爆破する」といった書き込みをした容疑者らが逮捕される事例が相次いでおり、「犯行予告をすれば捕まる」といった趣旨の報道も増えていた矢先の出来事だった。
実際、警察では、ネットへの対策を進めている。各都道府県警察ではハイテク担当の捜査官を置いているほか、警視庁では「コンピュータ犯罪捜査官」を中途採用してもいる。このポストに応募するためには、「シスアド」などのIT関連資格を持っているほか、民間で3年以上の職歴があることが条件で、ハードルはそれなりに高いと言える。
さらに、事件を受けて、警察庁と総務省は全国のISP(インターネット接続事業者)などに対して、ネット上で犯行予告を発見した際には警察に通報するように要請を行ってもいる。
いわば、犯行予告をする側からすれば「外堀は埋まった」かのようにも見える状態だが、それでも犯行予告は収まらないのだ。最近の事例をざっと見ただけでも、6月22日には、橋下徹大阪府知事の暗殺予告を掲示板に書き込んだとして、東京都の会社員(33)が逮捕されているほか、翌6月23日には、ディズニーランドでの殺害予告などで、少なくとも3人が逮捕されている。ネット上の犯行予告をまとめてあるサイト「予告.in」を見ても、毎日のように逮捕者が出ていることがわかり、特に中高生などの若年層が目立つ。
どこまでやると、親に怒られるのかといった感覚?
それにしても、「捕まることは分かっている」ようにも思える状況にもかかわらず、何故犯行予告はなくならないのか。ジャーナリストの井上トシユキさんは「捕まってみるまで実感がわかないのでは」と分析する。
「爆破予告で捕まった中高生は『ムシャクシャしてやった。今は本当に反省している』などと供述する例が多いそうですが、これはネタじゃなくて本当なんだと思います。彼らは捕まることは頭では分かっていても、いざ捕まってみて『ああ、本当に捕まるんだ』と、初めて実感を持っているのでしょう。私たちの世代でも、ちょっとした悪いことを『どこまでやると、親に怒られるのか』といった感覚で試してみたことありますよね? 彼らも、『living on the edge(境目を生きる) 』というか、それに近い感覚で犯罪予告をしてしまっているのだと思います」
なお、前出の「予告.in」の運営者は、
「予告inに通報された実名が確認できて、かつ悪質だと判断できるものを中心に通報していこうと思って、110番に通報していたら、『いま居る住所は?そちらに警察官、向かわせますんで。』と言われ、警察が画面を見る為に、わざわざオフィスまで来て、ちょっとビックリした」
とブログ(6月13日)で明かしており、警察もサイトに関心を寄せている様子だ。「ちょっとしたいたずらで(犯行予告)やりました」では許されない傾向が加速していくのは間違いなさそうだ。