J-CASTテレビウォッチで連載中の「チャンネルGメン(69+1)」が単行本「テレビの貧格」(東洋経済新報社)になったのを機に、著者でフジテレビの元ゼネラル・プロデューサー横澤彪さんに、バラエティやドラマ番組づくりに垣間見えるテレビ局の姿勢などを聞いた。
バラエティはパクリ企画が多すぎる
横澤彪さんの連載をまとめた「テレビの貧格」
――連載にはお笑いのほか、バラエティやドラマもよく取り上げられます。
横澤 バラエティはお笑いと同じ問題点を抱えている。パクリ企画が多すぎる。クイズだ、検定だ、といった要素を入れてひな壇芸人をそろえておしまいっ、といったものだ。そこそこ視聴率の数字が取れさえすればいい。そんな姿勢が見え見えだ。ぱっと見区別がつかない位似ている番組もある。「IQサプリ」と「平成教育学院」なんてどこが違うんだっけ? と説明に困る程だ。同じ構成作家が各局たらい回し状態で使われているような話も聞く。ドラマはマンガ原作が多すぎるんじゃないか。こちらもまともに脚本家を育てる気がなさそうで、安易につくろうという魂胆しか見えてこない。
――「安易」にながれているのは、現場の問題なのでしょうか?
横澤 現場レベルだけでなく経営側の問題もあるでしょう。現場でいうと、ほかの番組を見ただけで企画を議論しているのでは、という気がする。もっとコンセプト、どんな番組にして何を伝えたいか、をギリギリまで煮詰めてほしい。それには個々人がいろんな本を読んでないとダメだと思う。ネット情報でもいいのだけれど、テレビの中だけで考えていると浮かんでこないものだ。
イチかバチかのバクチなんてやらさない
――経営側の問題とは何でしょう。
横澤 テレビが権力を持ってしまった、ということなんだよ。自分たちは高給を食んでぬくぬくし、現場にイチかバチかのバクチなんてやらさないようになってしまったのではないか。いまだと視聴率12%ぐらいかな、それぐらいでいいやと、しかしそれ以下だと困る。こんな感じで、変に現場を縛っているのでは、という気もしている。それもあって、経営側は判断にスピードを欠いている。
――テレビへの注文は。
横澤 ドラマやバラエティが本当にいるのか。そこまで考えて、「本来のテレビ」の姿を描き直してみるのもいいかもしれない。あのしゃべる犬が出てくるソフトバンクのコマーシャルみたいな面白いコンテンツがどんどん放送されてくると、「ドラマなんていらない」という人も出てくるかもしれない。ニュースやスポーツ、ドキュメンタリーは、テレビならではの魅力を考える大きなヒントになるだろう。 視聴者にあいさつをする番組が減ったのも気になっている。時間のムダを減らしているつもりかもしれないが、視聴者と空間・時間を共有する、つながっている感覚を捨てているようなものではないだろうか。ともかく、テレビが地盤沈下していることに気がついてほしい。
*<編集部注>*
J-CASTテレビウォッチで連載中の「横澤彪のチャンネルGメン69+1」が、「テレビの貧格」(東洋経済新報社、1400円=税別)として出版されました。出版を記念して、テレビウォッチでは、横澤さんの直筆サイン入り「テレビの貧格」を5人の方にプレゼントします。みなさんに川柳に挑戦して頂き、「優秀賞(Gちゃん賞)」に選ばれた5人の方へ郵送させて頂きます。詳しくは以下の記事に載っています。
*「『川柳で 横澤さんに 挑戦だ』 サイン本プレゼント」(2008年6月24日)
【横澤彪さんプロフィール】
1937年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業後、フジテレビのゼネラル・プロデューサーや吉本興業専務、鎌倉女子大教授などを歴任した。フジテレビ時代には「笑ってる場合ですよ!」「オレたちひょうきん族」「笑っていいとも!」などの人気番組を手がけた。著著に「30代からの自己プロデュース」(新講社)などがある。