環境問題に対応するクリーンカー開発は世界の潮流だが、現状ではトヨタがリード。ただし、トヨタ社内での危機感、緊張感が維持できるかにかかっている――。
「クリーンカー」についての見通しを話す長谷川洋三氏
元日経新聞編集委員で自動車業界に関する著作が多い長谷川洋三・帝京大学教授が08年6月18日、東京の日本外国特派員協会で講演、日米欧で展開している熾烈な競争について見通しを話した。
長谷川氏は07年、「クリーンカー・ウォーズ」(中央公論新社)を出版、この春には英語版が出版された。
長谷川氏が最近訪問したアジア各地で受けた質問は、環境問題に対する関心と、日本の自動車メーカー、とりわけトヨタの動向だった。
米国のビッグ3が衰え、日本のビッグ3が伸びている。長谷川氏はその理由を、日本メーカー社内の危機意識の高まり、電気系統の部品や技術を供給する日本の電気メーカーの強さ、この2つにあるという。
「クリーンカー開発競争ではどのメーカーが勝者か」との質問に、「将来のことは分からないが、現状でいうならトヨタだ。ただし条件があって…」といって、日本メーカーが伸びている2つの要因がそのまま、クリーンカー開発でも重要だと指摘、とくにトヨタが現在の危機意識を維持できるかがポイントだとした。
クリーンカーの見通しについて日米欧とアジアでは経済界の感触が違うという。最近、クアラルンプールで開かれた経済会議で「環境問題も重要だろうが、世界経済悪化の影響でアジアが生き残れるかどうかがもっと深刻だという声が印象的だった」と話した。