フジテレビの元ゼネラル・プロデューサー横澤彪さんがJ-CASTテレビウォッチで連載中の「チャンネルGメン(69+1)」が、単行本「テレビの貧格」(東洋経済新報社)として出版された。業界の「ご意見番」ともいえる横澤さんに、お笑いとテレビ番組の「今」を聞いた。
今「ひょうきん族」と同じことすれば、手ひどく批判される
「つくり手の苦労・手抜きは視聴者に伝わる」と話す横澤彪さん
――ビートたけしさんや明石家さんまさんが一躍脚光を浴びた「オレたちひょうきん族」やタモリさんの「笑っていいとも!」を手がけた横澤さんには、現在のお笑い番組はどう映りますか。
横澤 まず、「ひょうきん族」の1980年代とは時代が大きく変わっている。今は、何かミスがあると魔女狩のように攻撃される。規制が厳しく、やりにくい時代の中でやりくりしているのだと思う。いま、「ひょうきん族」と同じことをすれば、手ひどく批判されるだろう、というか、同じようにはできないだろう。「おかしい」「面白い」だけを追い求めていくのには限界がある時代になっている。
――厳しい中、「頑張ってるな」と感じるお笑い番組は?
横澤 お笑いは際どい所を突いていく必要があると思う。そういう意味で「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系)は、頑張っている。出演しているナイナイことナインティナインの2人は、今でも体を張って若手がやるような企画に挑戦している。結構、お笑いに対して完全主義なんだろうね、こだわってやってる感じがビンビン伝わってくる。
――では、つまらない番組は。
横澤 どの番組が、ではなく傾向として2点不満がある。1つは似たような番組が多すぎる。もう1つはお笑いを細切れに扱い過ぎている。1点目は、視聴率が高い他局番組を安易に真似しているということ。自分たちが番組をつくっていた時は、いかに他人と違うことをやるか、少しでも違う点を出したい、とやってきた。とても大変だし、当たるかどうかバクチみたいな所もある訳だけど、そうした苦労をするエネルギーが欠けている気もする。
「くそじじい」なんて言われると、ちょっとうれしい
――お笑いを細切れに扱い過ぎている、というのはどういう意味ですか。
横澤 短いネタや一発ギャグをショーケース的に紹介する傾向が強すぎるんだ。芸人は「ギャグで受けギャグで死ぬ」と以前から言われてきた。ただ、ギャグだけじゃ、すぐに飽きられてしまう。しっかりネタを作り上げないと。今のテレビの現状を考えると、瞬間的というか、細切れというか、そんな傾向が出てくるのは分からない訳ではない。それでも、大げさに言うとネタへの冒涜だ、と思える番組が多すぎる。
――番組への厳しい意見に対しては、読者から厳しいコメントが寄せられることもあります。
横澤 批評するときは、なるべくいい所をフィーチャーしたいと思っている。いい所はいい、でもつまんない所ははっきり指摘する。まあ、テレビウォッチ編集部がつける見出しは厳しい点をフィーチャーしてる気もするけど(笑)。コメントは大歓迎。いろんな見方、意見があるなと参考になる。実はね、「くそじじい」なんて言われると、ちょっとうれしいんだ。
*<編集部注>*
J-CASTテレビウォッチで連載中の「横澤彪のチャンネルGメン69+1」が、「テレビの貧格」(東洋経済新報社、1400円=税別)として出版されました。出版を記念して、テレビウォッチでは、横澤さんの直筆サイン入り「テレビの貧格」を5人の方にプレゼントします。みなさんに川柳に挑戦して頂き、「優秀賞(Gちゃん賞)」に選ばれた5人の方へ郵送させて頂きます。詳しくは以下の記事に載っています。
*「『川柳で 横澤さんに 挑戦だ』 サイン本プレゼント」(2008年6月24日)
【横澤彪さんプロフィール】
1937年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業後、フジテレビのゼネラル・プロデューサーや吉本興業専務、鎌倉女子大教授などを歴任した。フジテレビ時代には「笑ってる場合ですよ!」「オレたちひょうきん族」「笑っていいとも!」などの人気番組を手がけた。著著に「30代からの自己プロデュース」(新講社)などがある。