いわゆる「居酒屋タクシー」問題をきっかけに、国家公務員のマイレージサービスの使用を制限する動きが具体化してきた。公費で海外出張した際に貯まったマイルを政府が管理出来るように具体的な検討に入っている、というのだ。一方の民間企業の側を見てみると、社用と私用の区別が難しいこともあり、「マイルは個人が貯めるものなので、会社では管理していない」「マイルは次の出張に使うのが常識」などと対応が分かれており、苦慮している様子だ。
トヨタ、日産は「会社管理はしていない」
民間では「出張マイル」への対応は分かれている(写真はイメージ)
中央官庁の職員が公費でタクシーを使って帰宅した際に、タクシーの運転手からビールや商品券を受け取っていた、いわゆる「居酒屋タクシー」に関連して、中央官庁が職員に対してマイル取得を自粛するよう検討を進めている。財務省が2008年6月12日に自粛を決めたほか、総務省や国土交通省もこれに追随。これと時期を同じくするように、6月9日には江田憲司衆院議員(無所属)が提出していた質問主意書に対して、6月17日の閣議で、マイルの取得を自粛する旨の決定を行った。
マイレージサービスは、搭乗した飛行機の飛行距離に応じてポイント(マイル)が与えられ、無料航空券などと交換できる制度。日本国内では1990年代後半から利用が本格化した。公金を使って飛行機に乗った際も、マイルは個人に付与されるため、そのマイルを家族旅行に使うケースも発生。「公金横領なのでは」といった声も上がってきた。
では、税金ではないものの、経費で社員を海外出張させている民間企業の場合はどうなのだろうか。いくつかの「グローバル企業」に聞いてみた。
「特に規定はありません。それぞれの社員の判断に任せています」
とする一方で、日産自動車も
「マイルは個人で貯めるものなので、特に会社として管理する、ということはしていません」
と話す。マイルは個人に付与されるものなので、内勤と「出張族」との格差が懸念されるところだが、実際は「社用と私用を切り分けるのが難しい」といった事情もありそうだ。
松下は「社用マイルは、会社に属する」
その一方で、「それでも社用と私用を切り分けるべき」との立場をとるのが、松下電器だ。同社の広報グループによると、
「特に成文化されたルールはないものの、業務で貯まったマイルは、会社に属すると考えるのが常識的で、それに従った運用がなされているところです」
とのことで、社用で貯まったマイルは出張用の航空券のために利用すべき、との立場だ。
もちろん、国家公務員の出張の元手は税金なだけに、民間企業と同列に比較するのも難しい。町村信孝官房長官は6月18日午前の記者会見で
「マイレージの取得で出張旅費が安くなるのであれば、税金の節約にもなる。その道を閉ざすのももったいない」
と述べ、マイルを取得した上で無料航空券を活用すべきとの考えを表明。さらに、
「航空会社と、うまい方法がないか相談を始めた」
と、政府名義でマイルを貯めるなどの検討を進めることを明らかにした。