幼女を5人誘拐し4人を殺害した宮崎勤死刑囚(45)の死刑が、2008年6月17日午前に執行された。犯行動機は未解明で、精神鑑定も継続中という状況の中だった。過去10年間の執行までの平均は8年という数字もあり、死刑確定から2年4ヶ月という「スピード執行」。08年6月8日に起きた「秋葉原無差別殺傷事件」が何らか影響したのではないか、という推測も出ている。
国民が憤りを持っているときに執行されることが多い
各紙は宮崎死刑囚の死刑執行を大きく報じた
全国紙各紙の夕刊はこの死刑執行について大きく紙面を割いた。各紙の記事で目立っているのは「この時期に死刑を執行したのはなぜ?」というものだ。朝日新聞は、「確定から2~3年で 法相『たまたま短縮』」という見出しを掲載。鳩山法相は慎重にも慎重な検討を加えた上で執行した、とし、それが、
「たまたま従来より短くなっていること」
と説明したと書いている。しかし、
「裁判や面会で宮崎死刑囚にかかわってきた人たちは、死刑確定から2年後という早い執行に衝撃を受けた」
とし、宮崎死刑囚は犯行について、最後まで「ひとごと」のような状態だったため、「彼は本当に、その重い罪と向き合えたのだろうか」と疑問を投げかけている。
読売新聞は、
「宮崎死刑囚の場合、今年5月末に再審請求を具体的に準備していることを書面で鳩山法相に伝えており、こうした状況で執行されるのは異例だ」
とし、法務省が執行に慎重になってもおかしくなかったと書いている。
そうした中で、このスピード執行には「秋葉原無差別殺傷事件」の影響が影を落としているのではないか、という推測がメディアでも囁かれている。
この日、TBS系情報番組「ピンポン!」に出演したジャーナリストの大谷昭宏さんは、
「国民が犯罪に対し憤りを持っているときに、(死刑が)執行されることが多い」
と主張。今回は、「秋葉原無差別殺傷事件」との関係があるのでは、という見方だ。宮崎死刑囚が最後まで「ビデオテープを早く返してほしい」などと意味不明なことを繰り返していた現状では、
「亡くなられた方々は、この執行をもって霊がうかばれるかと言うと、決してそうではない事件だったような気がするんですね」
と話している。
テレビ朝日のコメンテーター川村晃司さんは情報番組「スクランブル」に出演し、
「秋葉原と関係ないといいのですが、最近どうしても(凶悪事件は)死刑の方に流れている。そのへんの執行が体制として如何なものか、と言う批判も聞こえてきそうだ」
などと、性急な死刑執行に対して批判をしている。
弁護人は「死刑執行に対して強く抗議する」
宮崎死刑囚の弁護人を務めた田鎖麻衣子弁護士は同日、「死刑執行に対して強く抗議する」という声明を出した。精神治療を受けている状態であり、再審請求を具体的に準備していることを08年5月末に鳩山法相に伝えたばかりだった。田鎖弁護士が所属する「番町共同法律事務所」はJ-CASTニュースの取材に対し、
「死刑執行までの期間がだんだん短くなってきたのではなく、鳩山法相になってから急に短縮された」
とし、今回のような「スピード執行」は、様々な問題を引き起こす火種になりかねないとしている。
もっとも、宮崎死刑囚に対しては様々な見方があり、この日の死刑執行もやむなし、という意見も出ている。
「1審で異なる3通りの精神鑑定の結果が出たが、私は宮崎死刑囚は詐病だったと思う」(毎日新聞、作家の佐木隆三さん)
取り調べを担当した元警視庁捜査一課理事官の大峯泰宏さんは、
「(宮崎死刑囚の)自供からこの日まで長かった。ご遺族にとって気持ちの一つの区切りになれば何よりだと思う」(読売新聞)
なぜスピード執行がされたのか、秋葉原事件との関連性はあるのかについて法務省はJ-CASTニュースの取材に対し、
「お答えすることはできません」
とだけ話した。