開業したばかりの東京メトロ副都心線が、相次ぐトラブルに見舞われている。トラブルの内容はというと、直通運転先の電車の遅れを引きずったり、一定区間に多くの電車が走ったため発生した停電など、相互乗り入れに関係したものが多い。今後も首都圏の鉄道では相互乗り入れが拡大する予定で、その分「遅れリスク」も高まる可能性が出てきそうだ。
開業後の4日間、ダイヤ乱れが発生
東京メトロは6月16日時点でお詫びコメントを発表している
東京メトロでは9番目の路線となる副都心線は、2008年6月14日に開業。和光市(埼玉)と渋谷(東京)の20.2キロを結ぶ路線で、すでに有楽町線が使用している和光市-池袋に加えて、池袋-渋谷間8.39キロが新設された。並行するJR山手線や埼京線の混雑を緩和する「バイパス路線」としての役割が期待されているほか、沿線の新宿3丁目や池袋でのデパート競争に拍車がかかるものとみられている。
ところがこの新路線、開業後の4日間、ことごとくダイヤ乱れが発生しており、「連戦連敗」なのだ。初日の6月14日には自動列車運転装置(ATO)の不具合で15分程度の遅れが断続的に発生したほか、翌15日にも車両点検などで遅れが発生。
週明け月曜日の6月16日には、さらに別のトラブルに見舞われた。副都心線は、和光市で東武東上線に、小竹向原(東京)で西武有楽町線を経由して西武池袋線に乗り入れているが、この調整ミスがトラブルの原因になった。具体的には、同日朝、西武線からの乗り入れ電車が遅れていたため、本来は後発予定の東武線の電車を先に出発させるべきところ、そのまま後発予定の電車を待たせてしまったため、約35分の遅れが発生した。
それ以外にも、同日夕方には、各駅停車の電車が誤って急行電車用の線路に進入するというトラブルも発生。ダイヤ乱れはほぼ終日続いた。翌17日にも、走行中の電車がいっせいに加速したことから変電所2ヶ所のブレーカーが落ちて停電。15~30分の遅れが発生した。
17日朝の池袋駅など主要駅には、遅延証明書を求める長蛇の列ができた。
東京メトロでは、6月16日のトラブルを受けて「お客様に大変ご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます」とのコメントを発表しているが。翌6月17日にもトラブルを防ぐことはできなかった。
こう見ていくと、トラブルの背景には、いわゆる「初期不良」に近いもの以外に、相互乗り入れの複雑さが一因として浮かび上がってくる。具体的には、鉄道各社が利便性向上を目的に、運転本数の増加や直通運転を増やす一方、路線のどこかでトラブルが発生した場合、それが路線全体に波及してしまう、という可能性だ。
4年後に副都心線と東急東横線が相互乗り入れ
国土交通省の調べによると、運休や30分以上の遅れが発生する「輸送障害」の件数は、06年度で4421件。ピークの05年度に比べれば15%減少しているものの、96年度と比べると48%の増加をみせている。同省の鉄道局では、
「遅れは増えているのですが、運転事故そのものは減っています。これは、例えば『ホームから人が落ちた場合、すぐに緊急停止ボタンが押され、広い範囲で電車が止まる』といったことがあったり、踏切などの小さなトラブルでもすぐに警告装置が作動するようになった、という背景があります」
と分析、直通運転の影響についても
「(直通運転先の)遅れを引っ張ってきてしまっている、という面はあるかも知れない」
と話す。
今回の副都心線の開業で東京メトロとしての新線建設は「打ち止め」。ただし、2012年には、副都心線と東急東横線で相互乗り入れを行うことが決まっているほか、相模鉄道が2015年にJR東海道貨物線と、2019年に東急東横線との相互乗り入れを計画している。
各社とも「遅れの際は相互乗り入れを中止して折り返し運転を行い、一定区間内の運転本数を守る」といった対策を講じてはいるものの、試行錯誤は続きそうだ。