岩手県内陸南部を震源とするマグニチュード7.2の大地震が日本列島を襲った。実は、地震に先立つこと約1か月。「大気イオン濃度」の異常な上昇を受けて、「大地震に要注意」と警告していた人物がいた。
「大地震だと30日前にイオン濃度の大きな上昇が見られる」
地震前に「イオン濃度」の異常値があったと言うが・・・
NPO法人「大気イオン地震予測研究会(e-PISCO)」は2008年6月14日、5月中旬に「大気イオン濃度」が東日本で異常値を記録したことについて、同日朝に発生した岩手・宮城内陸地震との関連を調査していると発表した。
同研究会は、「イオン濃度」の急上昇が地震の前兆である可能性が高いとして、イオン濃度を測定して地震の予測を研究している団体。
神奈川・厚木地点での測定値が5月13~14日にかけて急上昇していた。大阪市立大学名誉教授で同会理事長である弘原海清氏は、5月中旬時点でのJ-CASTニュースの取材に対し、大きい地震だと30日前、小さな地震でも1~2週間前にイオン濃度の大きな上昇が見られていると指摘。関東地方を中心に、地震に要注意すべき状況であると述べていた。
岩手県内陸南部を震源とするマグニチュード7.2(推定)を記録した地震が発生したのは08年6月14日朝。5月中旬からちょうど30日経過した時点ということになり、同研究会が想定した「大きな地震」のケースと時期的にはぴったりと符合している。
「イオン濃度が5月13日の終わり頃から(1ミリリットルあたり)1万個を超え、次の日も2万個ぐらい。また19日にも強いのが出てきて、また21日に1万個ほど出てきています。実に2週間かけてイオン濃度が異常値を示しており、岩手・宮城内陸地震の前兆だったのではないかと思っています。まあ、いまそういうことを言っても結果論になりますが」
地殻に圧力かかり、亀裂が入って、空気中にラドンが放出?
弘原海氏が「出ている」というのは、大気中の「プラスイオン」のこと。通常は1ミリリットルあたり数千個程度ある。同氏によれば、地震前に地殻に圧力がかかり、地殻に微細な亀裂が入って、空気中にラドンが放出される。そのラドンが大気と接触することでプラスイオンとして地表に落ちてくる、というのである。その後も地殻に圧力がかかり続けて地震が発生するため、先行して発生するこの「プラスイオン」の濃度の急上昇で地震の予兆が捉えられるという理屈だ。
同研究会はこれまでに、新潟中越沖地震や5月8日に発生した茨城沖での地震などで、地震の予兆と見られる「イオン濃度」の変化を捉えたとしている。
しかし、「関東地方に地震が来る可能性がある」という指摘と今回の岩手・宮城内陸地震は地理的には隔たりがある。それはなぜなのか。
「測定器が東北に1台くらいなければやはり、東北地方に来るとは言えません。東北大学に測定器を置くようにお願いしているのですが文科省の理解が得られず置けていないんです。東北についてはどうしても弱いというということになる。データがそろえば思い切った予測ができるのですが」
今回の場合、大きな地震であるため関東地方にまでも地殻変動の影響があり、そのため関東地方でもイオン濃度の異常が見られた、という説明だ。「実績を積んで、皆さんにその信憑性を示したい」と考えている。一方で、「イオン濃度」と地震の関連性について、学会からは「信憑性が低い」といった指摘もあるという。