REITの市場低迷に拍車?
賃貸オフィスの空室率を、いちばん気にしているのが不動産投資ファンド(REIT)だ。REITの配当のベースは賃貸料にある。高い利回りを確保、維持するためには、できるだけ賃貸料の高い新築や築浅で人気の立地にある物件を購入していく必要があって、そういった物件を効率よく購入するためには銀行や投資家からの資金調達が必要だった。反対に、REITがこれまで賃貸オフィスの賃貸料の上昇を後押ししてきたともいえるわけだが、需給バランスが保たれて空室率も低くて済んでいた。それが、崩れてきている。
6月19日に、東京証券取引所に上場するはずだった不動産投資信託(J-REIT)、「大和ハウスリート投資法人」は上場を中止した。親会社の大和ハウス工業は「(マーケットが)厳しいことは理解していましたが、思っていた以上だった」と、投資家の需要のなさに落胆した。
J-REITの06年の上場件数は13件だったが、07年はわずかに2件。上場承認後の取り消しは07年6月以降で5件目になる。東証も「サブプライム問題以降、市場が低迷して資金が集まらなくなっている」と憂いでいる。
REITアナリストの山崎成人氏も、「オフィス賃貸市場は潮目が変わった」と認識している。「REITが保有するオフィスビルの稼働率は99%だし、保有する物件は継続賃貸なので急激に変化する(稼働率が落ちる)ことはない」というが、一方で「物件によって賃貸料も違うので銘柄ごとにきちんとみなければならない」と、投資のときにはREITの見極めが必要と説く。
東証に上場するJ-REITは現在42銘柄で、そのうちの23銘柄と、半分以上が公募価格を割り込んでいて、底値もわからない状況だ。閉塞感が漂う、いまのREIT市場にあって、これに空室率が上昇して賃貸料が下落するとなると、由々しき事態に陥る。